文・佐々木將人(日立総合計画研究所社会システム・イノベーショングループ 研究員)
地方自治体ではITを活用した効率的で質の高い行政サービスの実現に向けて取り組んでいます。しかし、特に小規模な地方自治体においてはシステムの開発や運用の経費に対する負担が重くなっていることが問題点として指摘できます。総務省は、解決策のひとつとして地方自治体における共同アウトソーシングを推進しています。共同アウトソーシングは、(1)行政サービスの質的向上、(2)IT関連の経費削減、(3)業務改革、(4)IT関連地場産業を中心とした新需要創出、を目標としており、複数の地方自治体がシステムを共同開発し、共同利用することになります。しかし、IT関連の経費にどの程度費やしているのかなどの情報が入手できないために、どの地方自治体とどのシステムを共同開発・共同利用すればいいのかを計画することが困難なことが課題となっていました。
そこで、2005年9月に総務省および地方自治情報センター(LASDEC)は、全国2172団体に対し各団体で現在運用されている業務システムの導入と維持に必要な経費などを把握する「市町村の業務システムの導入及び運用に要する経費等の調査」を実施しました。アンケートを各自治体に配布したもので、2006年3月3日現在、合併直後の市町村を除く1950団体の回答が集計済みとなっております。
調査には、システムの属性、形態、経費、委託先といったことが含まれます。(表1)
■表1 主な調査内容 | |||||||||||
|
調査対象となったのは、表2の通り住民情報関連、税などを含む28システムになります。
■表2 調査対象システム | ||
|
このようなIT関連経費に関する地方自治体の全国的な調査は初めての試みであり、二点の意義を指摘することができます。一点目は、実態が分かりにくかった地方自治体の業務システムの経費に関する情報が公開されたことです。調査結果は、LASDECのホームページからPDF形式で閲覧することが可能です。また、一定の条件を満たした企業、大学といった研究機関などに対しては、誓約書と担当者の情報を提出すればエクセルデータを配布しています。
二点目は、各自治体がIT関連経費について、同様の規模や産業構造の地方自治体との定量的な比較が可能となり、その位置付けを把握できるようになったことです。その結果、アウトソーシングの取り組みが進み、地方自治体の業務改革にも結びつくと考えられます。
IT関連経費の動向を把握していくためにはこうした調査の継続が望まれます。今回は一回目の調査ということもあり、記入漏れや、金額や年度の記入ミスなどが少なくありませんでした。この調査結果を有効活用するために、今後はさらなるデータの精査が必要であると思われます。