その時々の状況に合った財務目標を立てて短期的に見直していく経営管理モデル。予算不要論とも呼ばれ、予算に縛られない柔軟性の高さが注目を集めている。

 期末をはじめとして、締めの時期が近づくと予算達成に躍起になる現場が珍しくありません。ギリギリになって、計画した売り上げ金額に合わせようとするあまり、時には戦略を欠いた施策を実行してしまうこともあるのではないでしょうか。

 予算の制約を受けていると経営環境の変化に即応しにくくなる懸念もあります。柔軟性を確保するためには、短期間で計画を見直す体制が必要です。

 短期的に売り上げや経費を予測し、その時々の状況に合った財務目標を設定していく経営管理モデルが「BBM(超予算モデル)」です。1998年に設立された「BBRT(超予算モデル分科会)」という、欧州を中心とする企業から成る組織が提唱しました。

◆効果
予算の形がい化を防ぐ

 BBRTは、多くの企業が採用してきた従来の予算管理制度の問題点をいくつか指摘しています。

 「膨大な時間とコストがかかる」「状況の変化に柔軟に対応できない」「戦略とかい離する」——。経営環境の変化が激しい現在は、1年や半年といった長期間の単位で設定した予算が企業にとって足かせになりかねません。

 予算の編成には相当な時間や労力をかけているにもかかわらず現場がちぐはぐに動いたのでは、予算は形がい化しているも同然です。

 予算を達成したかどうかで成果を評価する体制では、現場が強引な手に打って出ることも考えられます。戦略とかけ離れた場当たり的な施策を実行していれば、せっかく描いていた成長プランも崩れてしまうでしょう。さらに、不正行為につながる恐れもあります。BBMは、予算管理制度が抱えるこうした課題を解決する手法として注目されています。

◆事例
予算レスで最高益

 BBMは北欧の企業を中心に導入が進んでいます。日本では、KDDIが予算を編成しない経営管理手法を取り入れています。「マスタープラン」と呼ぶ月単位の収益計画を基に現場が動く仕組みを構築しました。

 同社は、部や課、室といった小単位の組織ごとに、月半ばで達成度合いを確認し行動計画を修正しています。翌々年度の予算枠を確保するために、翌年度の予算を多めに設定するといった、予算が経営の実態とかけ離れることを防いでいるわけです。

 綿密に立てた月次の収益計画を基にPDCA(計画-実行-検証-見直し)サイクルを回すことで、現場に採算管理を徹底させます。KDDIの業績は好調で、2005年3月期は連結で過去最高益を達成し純利益は前期比1.7倍の2005億円となりました。