フリー・エンジニア
高橋隆雄 フリー・エンジニア
高橋隆雄


前回はAsteriskの概要について簡単に説明した。今回はAsteriskが何に使えるのかという観点から解説することにしよう。AsteriskはIP-PBXの一種ではあるが、そのサポートするプロトコルは広範にわたる。例えばSIPしかサポートしないPBXとは異なり複数のプロトコルを1台のPBXでサポートすることが可能である。

 まず第一にPBXとして使えるのは当たり前である。そもそも名称にPBXと付いているのだから、これは当然。ただし単純に従来のPBXをリプレースするものではない。

 Asteriskでサポートされているアナログ電話機のインタフェースはいわゆる2ワイヤー。これに対して日本でよく使われている旧来のPBXの多機能電話機、いわゆるビジネスホンでは4ワイヤーの専用インタフェースを用いるのが普通だ。このため電話機とPBXは必ずセットでなくては使えない。アメリカ生まれのAsteriskには、日本のビジネスホンを収容する4ワイヤー・インタフェースもなければ、それを制御する機能もない。当たり前の話だがプロプライエタリなPBXの専用電話機の制御方法は通常、公開されているわけもないので他社が実装できるわけもない、ということだ。

 ただしこのことはIP-PBX化を推進する企業などにおいては全く問題にならない。なぜならばIP-PBX化の過程において電話機はIP電話機にリプレースされていくため旧来のビジネスホンは不要となるからだ。また、音声会議の追加など、既存のPBXに機能を付加するためにAsteriskを導入する場合も問題にはならないはずだ。PBXには普通の電話回線でつなげばいいからだ。

 あくまでも仮定の話だが、既存のPBXメーカーが自社の4ワイヤー電話機用のインタフェース・ボードを開発し、PBXのコアとしてAsteriskを採用するようになると電話機をリプレースせずともPBXをIP化し、さらには多機能化することも可能になるであろう。もっともPBXメーカーの営業という観点からいえば電話機もリプレースさせたいはずなので、このようなアプローチが取られる可能性は低いかもしれない。

Asteriskがサポートするプロトコル

 Asteriskがサポートするプロトコルは以下の通り。ただし、これはAsteriskといっしょに配布されているものだけ。別途配布されるモジュールは含んでいない。

Agent(ACD Agent Channel)
Console(Linuxのコンソール。音声にはOSSまたはALSAのサウンドドライバを使用)
H.323
IAX/IAX2
Local(Asterisk内部の呼処理)
MGCP
Modem(モデムのことではなくISDN回線の意味)
phone(Linuxテレフォニー)
SIP
Skinny(Cisco Skinny)
VOFR(Adtran Voice Over Frame Relay)
VPB(Voicetronixカードを使用。アナログ電話)
Zap(Digiumのカードを使用。アナログ電話)

 これらはそのままずばりAsteriskのチャネルである。Asteriskはチャネル・ドライバとしてこれらをサポートしているため、上記のプロトコルを使ってAsteriskに接続可能な電話機や電話回線を相互接続できる。

 別途配布されているモジュールにはBluetoothやSCCPなどもある。またデジタル接続の手段として各種ISDN(mISDN,vISDN,CAPI)も提供されている。