日経情報ストラテジー7月号「業務革新ビフォーアフター」で北海道電力を取り上げます。同社では現在、社内に次々と組織横断的なプロジェクトチームが生まれ、それぞれが自発的に業務改革に動きつつあります。長年、規制に守られた「殿様商売」が続いてきた電力業界でも近年の電力自由化範囲の拡大を受けて、各社は改革にやっきになっているのです。詳細は24日発売の弊誌を読んでいただくとして、ここでは同社の事例から改革を成功に導くポイントを4つ選んでみます。

 1つ目は「経営トップの理解と支援」です。北海道電力が経営改革に乗り出したのは2001年10月。きっかけは当時社長であった南山英雄現会長の鶴の一声だったそうです。実行は現場に任せつつも南山会長と近藤龍夫社長はマスコミでのインタビューや社内外に発表する経営計画では頻繁に改革運動を触れるようにしていました。北海道電力を取材するマスコミの多くは2700億円を投じた泊原子力発電所3号機の開発計画や話題のオール電化に目を奪われがちですが、歴代トップは業務改革の重要性も力強く社内外に向かって訴えていたのです。

 次に「コンサルティング会社との関係」も重要でしょう。北海道電力では改革のパートナーとして十数社の中から小規模なコンサルティング会社を選びました。ほかに大手コンサルティング会社やIT(情報技術)ベンダーも候補にあがったそうですが、同社は「風土改革・意識改革を促してくれる」という点を重視しました。コンサルティング会社との窓口でもある資材部国際調達・SCMグループの古館直樹グループリーダーは「ITに強い会社、在庫管理に詳しい会社などありましたが、考えさせて意識変革を手伝ってくれるようなパートナーを選んだ」と話しています。

 3つ目が、その古舘さんが所属する資材部の存在です。最初にSCM(サプライチェーン・マネジメント)改革に取り組み、その後のクロス・ファンクショナル・チーム(CFT)の重要性を説く社内のコンサルタントのような立場になっています。外部のコンサルティング会社と現場をつなぐ「翻訳係」の存在は電力業界のような特殊な世界では特に重要だったといえます。資材部は各部署、支店を回り勉強会を開いたり、CFTの運営に関するマニュアルを作るなどもしました。

 4つめは「部分最適に陥らない」でしょう。北海道電力では10以上の改革プロジェクトが次々に動き出していますが、それぞれのテーマに携る複数の組織を巻き込んでいます。社内の部署だったり、メーカーや運搬業者、工事業者など外部の取引先だったり、グループ会社だったりします。縦割りの意識が強いと全体最適の改革は進みません。北海道電力では常に関係者が一堂に会して改革を進めるようにしています。

 北海道電力の改革には「見える化」「CRM」「管理会計」「ABC分析」「シェアードサービス」といった新旧様々な手法が柔軟に取り入れられています。これらをいかに定着させるかが課題でしょう。これからの改革も楽しみにしたいと思います。