写真3●福島県立郡山北工業高校のチーム「マサカーズFINAL」の,渡邉和宏くん(左)と松本政成くん(右)
写真3●福島県立郡山北工業高校のチーム「マサカーズFINAL」の,渡邉和宏くん(左)と松本政成くん(右)
[画像のクリックで拡大表示]
写真4●愛媛県立今治工業高校のチーム「ダーリン☆ハニー☆」の,周藤優菜さん(左)と中野友理子さん(右)
写真4●愛媛県立今治工業高校のチーム「ダーリン☆ハニー☆」の,周藤優菜さん(左)と中野友理子さん(右)
[画像のクリックで拡大表示]
写真5●チーム「ダーリン☆ハニー☆」の作品。パンフレットによると「フラッシュは難しいのでGIFアニメでがんばった」とのこと
写真5●チーム「ダーリン☆ハニー☆」の作品。パンフレットによると「フラッシュは難しいのでGIFアニメでがんばった」とのこと
[画像のクリックで拡大表示]
写真6●山形県立新庄神室産業高校のチーム「TM型トランジスタ」の,阿部俊之くん(左)と大場正明くん(右)
写真6●山形県立新庄神室産業高校のチーム「TM型トランジスタ」の,阿部俊之くん(左)と大場正明くん(右)
[画像のクリックで拡大表示]
写真7●チーム「TM型トランジスタ」の作品。実写の写真にアニメを融合させた手法を取る
写真7●チーム「TM型トランジスタ」の作品。実写の写真にアニメを融合させた手法を取る
[画像のクリックで拡大表示]
写真8●プログラミング部門で優勝した静岡県立浜松工業高校のチーム「Euphoria」。左から,田山貴士くん,鳥居良光くん,田澤一帆くん
写真8●プログラミング部門で優勝した静岡県立浜松工業高校のチーム「Euphoria」。左から,田山貴士くん,鳥居良光くん,田澤一帆くん
[画像のクリックで拡大表示]

 大会2日目に行われたのは,デジタルコンテンツ部門のプレゼンテーションです。コンピュータを使用して,テーマに基づくCGなどの作品を制作し,制限時間7分の間にその作品を披露しながらスピーチをします。今年のテーマは「21世紀の大発明・大発見!」。うーん,かなり大きな設定ですね。ここに集結したのは,177チーム354名の中からみごと予選突破を果たした10チーム20名。どのチームも若者らしい自由奔放な想像力で,固くなりつつある私たち大人の頭を刺激してくれました。ここでは,入賞した3チームの作品を中心にご紹介することにしましょう。

 デジタルコンテンツ部門の第3位は福島県立郡山北工業高等学校のチーム「マサカーズFINAL」。松本政成くん,渡邉和宏くんの二人は,3年連続で本選大会に出場しているベテラン(写真3[拡大表示])。今年の作品の設定では,松本くんも渡邉くんも,現役を引退しておじいさんになっています。それぞれ一人乗りのガンダムのようなロボットを作って宇宙をかけめぐったり,海辺の家で波力発電を実用化させたり,相変わらず発明三昧の日々を送っています。そこへ彗星が月に衝突して地球が真っ暗闇になるという天変地異が発生。NASAがパニックに陥るなか,松本くんはロボットに乗り込み,渡邉くんが発明した波力発電で充電して月まで様子を見に行きました。しかし別の隕石が月へ向かっていくことがわかり,渡邉くんは松本くんにすぐにそこを離れろと伝えるのですが,松本くんは「お前の開発した,人の祈りの力をエネルギーに変える装置を使って強く祈っててくれ」といって姿を消してしまいます。その結果,月と地球には何ごとも起こりませんでした。しかし,松本くんと彼の乗ったロボットはまだ帰りません…。

 この先どんなに科学が発達しても,人は心を忘れてはいけないというメッセージをこめたプレゼンテーション。コンテンツそのものは下手うま調なんですが,笑いあり涙ありとストーリーが起伏に富んでいて,ぐっときちゃうんですよね。

 準グランプリは,愛媛県立今治工業高等学校の中野友理子さん,周藤優菜さんの二人(写真4[拡大表示])。チーム名は「ダーリン☆ハニー☆」です。戦争や自殺,児童虐待など,人々に悲しい出来事が起こるのは,人の心が十分育ちきっていないからだと考え,発明したのが“こころシール”。このシールを人形やぬいぐるみなどに貼ると,それらは生きて動くようになり,子どもに「そんなことをしたら相手は悲しむよ」「それは地球を傷つけることですよ」などといろいろなアドバイスを授けます。ときには親と子どもの間に立って仲裁したりもします。子どもの心が十分に成長したなと思ったら,人形やぬいぐるみは子どものそばから離れます。依存を防ぐためなのだそうです。“こころシール”という仕組みのある未来では,人と人が温かく接することができる居心地のいい世界です,と彼女たちは主張して発表を締めくくりました。絵がうまいんですよねー(写真5[拡大表示])。プロの漫画家さんみたいです。

開発したのは核ミサイルではなく…

 栄えあるグランプリを獲得したのは,山形県立新庄神室産業高等学校の阿部俊之くんと大場正明くんから成るチーム「TM形トランジスタ」(写真6[拡大表示])。ストーリーはこんな感じ。“僕”と“ヒデ”は幼なじみ。小さいころからよく夢を語り合い,その中でヒデは戦争を憎み,心の底から世界が平和になることを望んでいると訴えていました。ところが,成人して科学者になったヒデは戦争を始めた政府軍に志願入隊し,あろうことか核ミサイルを開発したというのです。それを聞いて以来,“僕”はヒデと絶縁状態になってしまいました。その核ミサイルは発射に向けて着々と準備が進められ,予定どおり打ち上げられます。これで地球も終わりと思った瞬間,空は白い光に包まれ,人々は脳裏に幸せだった過去を思い浮かべます。実は,ヒデが開発したのは核ミサイルではなく,人々に昔の記憶をよみがえらせる装置だったのです。これにより人々は平和の大切さを思い出し,戦争は地球から自然消滅していったのでした…。発明はすべての人々に役立つものであるべきだというメッセージが込められたこの作品(写真7[拡大表示])は,実写とアニメーションを融合させたアイデアといい,選んだBGMの的確さ,質の高さといい,映像化のセンスが抜群でした。

 表彰式のあと,この二人に感想を聞きました。なんとデジタルコンテンツを制作し始めたのは今年からなのだそうです。「パソコン甲子園に出場を決めたとき,人と同じことをせずに起承転結のあるストーリーを組み立てれば,入賞できるのではないかと作戦を立てました。自信があったかというと,実はそうでもなかったのですが(笑)。戦争を題材にしたのは,映画を見たのがきっかけです。戦後60年,ここらでもう少しちゃんと考えておかないといけないな,と思って選びました」(阿部くん,大場くん)。

大どんでん返しの結果発表!

 さて,大会のフィナーレを飾るのは表彰式。いよいよ,プログラミング部門のトップ3チームが発表されます。司会者の方から続々と名前が読み上げられました。

 第3位,福島高専。準グランプリ,伊奈学園。そしてジャジャーン,グランプリは,浜松工高という結果でした。ということは,最後の追い上げで伊奈学園が5位から2位に,浜松工高が3位から1位に浮上したということですね。ほんとに大どんでん返しがあったんだ。

 優勝した浜松工高の田澤一帆くんは,表彰式では涙を抑えきれませんでした。まさに感無量という感じでしょうか。表彰式を終えてすぐの感激の中,感想を聞いてみました(写真8[拡大表示])。「3年間コツコツと積み上げてきたものが報われてよかったです」とは田澤くん。隣の鳥居良光くんに作戦を聞くと,「まずは10点問題を着実に解いていって,残り一時間というところで45点問題に切り替えてラストスパートをかけました。」とのこと。また「パソコンの前に座れるのは一人45分までにして,解けても解けなくても次のメンバーに席を譲るようにしたのがよかったかもしれません」と勝因を分析してくれました。なるほど,単純なルールを設けたほうが,3人で1台のパソコンを効率よく使えるかもしれません。ちなみに解答に利用したプログラミング言語は,「慣れているC言語」だったそうです。同チームの田山貴士くんが重要な補足をしてくれました。「今年はリベンジだったんです。去年,金沢泉丘高校に150点差で負けて,『同じ学年なのにどうしてこんなに差がつくんだ』と思って。日経ソフトウエアでの扱いも小さくて悔しかったので,この一年はすごくがんばりました。プログラミングに関しては人のいうことを聞かない3人なんですが(笑),昨日だけは最高のチームワークを発揮することができました」。うーん,私もひそかに彼らのがんばりに加担していたんだ。

 伊奈学園の追い上げもすごいものがありました。惜しかったですね,と聞いてみると,「うーん,正直もうちょっと行きたかったなというのはありますね。45点問題が五つ解けて『もう解くものがない!』という感じだったので,もう少し45点問題が多ければ何とかなったかも」と須永くんのコメント。もっと難しい問題が多いほうがよかったとは,やっぱりただものではなかったようです。大学へ進んでも,新たなコンテストに参加し続けてくださいね。

☆            ☆            ☆

 いやあ,びっくりですよ,ほんと。たった1年の間にこんなにぐぐーんとレベルが上がっちゃうなんて。成長著しいという言葉がありますが,心の底からそれを実感した今大会でした。若いっていいなー。第3回でこうだと,第4回は一体どこまでいってしまうのでしょうか。これは絶対見逃すわけにはいきません。今年悔しい思いをした皆さん,浜松工高みたいに,次は大きな花を咲かせましょう。ファイト!


名 称:第3回全国高等学校パソコンコンクール
開催地:会津大学(福島県会津若松市)
URL:http://www.pref.fukushima.jp/pc-concours/

学生向けソフト開発イベント特集

学生向けソフト開発イベント特集ページへ