all images courtesy of MacGillivray Freeman Films

 これまでLAN内でビデオや音楽をストリーミング再生する手法を紹介してきたが,インターネットを介して,自分のパソコンにあるメディアをストリーミング再生できるサーバー・ソフトウエアがある。Orbというこの無料ソフトウエアを自分のWindowsパソコンで動かすと,Webブラウザを使ってリモートから自分のパソコンにログインし,ビデオ,音楽,画像を再生できる。Orbは日本語版もあるが,WebブラウザでOrbサーバーにアクセスする画面は英語である。

 ビデオと音楽は,Windows Media Player(WMP)とRealPlayerで再生できる。Windows MobileまたはWindows CEを搭載したPDAでも再生可能だ。HP iPaqのほとんどの機種や,Dell Aximなどで再生できる。WMPが動作するWindows Mobileでも再生できるので,Willcom W-ZERO3でも再生できる。携帯電話でも,3GPP Playerを搭載している機種ならば再生できる。詳しくはここを参照のこと。

 WebカメラをサーバーPCに接続して,そのビデオをストリーミングすることもできる。米国では飼い主が外出中に,ペットの様子をモニターするのによく使われている。

Orbサーバーのインストール

 ルーターを使っている場合は,WWWサーバーを動かすのと同じように,ルーターを設定する必要がある。使用するポートは次の通りだ。

・WMPの場合 TCP/80
・RealPlayerの場合 TCP/554,UDP/13398

 詳しくはこちらを参照のこと。WMPを使う場合はTCP/80を使うので,WebサーバーやSkypeなど,TCP/80を使用するほかのサーバー・アプリケーションを停止しないとOrbは動作しない。

 Orbの設定は図1のように行う。ストリームしたいビデオや音楽のフォルダは図2のように指定する。ストリーム再生できるファイルは,WMPまたはRealPlayerが再生できるファイルである。3GPP形式の動画をWindowsで再生するにはQuick Timeが必要である。


図1●Orbの設定画面
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図2●ストリームしたいビデオや音楽のフォルダを指定する
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 実際にストリーミング再生するには,http://my.orb.com/にアクセスし,自分のIDとパスワードでログインする(図3)。


図3●my.orb.comにログイン直後のページ
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 Orbにログインすると通信速度が測定され最下部に表示される。ビット・レートの高いビデオをストリーミングすると,自動的にOrbが,通信速度に合わせてストリーミングする。この機能のおかげで,高解像度のハイビジョンWMV HD 720pの映像でも,ビット・レートと解像度を落として,非力なPDAで再生できる。

 ログインできるユーザーを限定できる。同時に複数のユーザーがログインできるが,全員同じビデオしか見られない。サーバーのバンド幅が十分ないと,6人同時にストリーミングするのは困難である。

W-ZERO3で再生

 PHS電話とWindows MobileによるPDA機であるWillcom W-ZERO3で,Orbのビデオ・ストリームが再生できるか実験してみた。まず4XのPHS回線(128kbps)で試したが,実効転送速度が50kbpsから60kbps程度しか出ないので,切手サイズのビデオ程度しか再生できない。

 無線LANで接続すれば実効1Mbps程度出るので,より解像度の高いビデオを再生できる。W-ZERO3のWMPで再生できる最大解像度は320×240ピクセルである。

 下の図はW-ZERO3でストリーミングを受信している画面。元のビデオはWMV HD 720pのハイビジョン映像である。ここのサンプル「Corel Reef Adventure(images courtesy of MacGillivray Freeman Films)」を使用した。Orbサーバーがバンド幅に合わせて自動的にビット・レートと解像度を落としてストリーミングしている。


 下の図はWMV HD 720pの映像を,Windows Movie Makerで437kbps/15fps/320×240ピクセルに変換したものである。


[画像をクリックするとムービが再生されます]

 W-ZERO3がビデオを再生している映像は,右の画像をクリックすると別ウインドウで再生される。WMV HD 720pのハイビジョン・ビデオとしてマイクロソフトが配布している映像「Speed(images courtesy of MacGillivray Freeman Films)」をOrbサーバーから無線LANで受信し,Willcom W-ZERO3で再生している様子。Orbサーバーが1Mbps程度のビット・レートに変換してストリーミングしている。


ホットスポット接続の実験

 有楽町・丸の内の仲通りホットスポット解放区では,電波が弱く接続できない場所が多数あった。丸の内カフェ内では接続に成功。実効1Mbpsは出ていた。丸の内カフェの外側の仲通りはホットスポット解放区なのだが,カフェから出た途端に接続が切れてしまう。いつもながら,何とか無線LANの使用可能範囲がもっと広がってほしいと強く切望する。

 ストリーミングの本題から離れるが,ZERO3の使い勝手を実感してみた。W-ZERO3では,PocketPC版Skypeが利用できる。10Mbpsの無線LANで接続し,Skypeによる音声通話を,フランス・パリ,米国カリフォルニア・バークレー,韓国ソウルのユーザーと実験した。通話にはマイク付イヤフォンを使った。結果は次の通り。

パリ:こちらの声は相手によく聞こえている。相手の声はノイズが入り途切れる。
バークレー:こちらの声はバケツの中で喋っている感じで相手に聞こえる。相手の声はノイズが入り途切れる。別の日にも実験したが,同じ結果だった。
ソウル:こちらの声は相手によく聞こえている。先方の声はノイズが入り途切れる。

 この結果から,日常的にW-ZERO3でSkype音声通話を行うのはかなり辛い。音声のデコード,エンコードに416MHz動作のCPUでは力不足なのかもしれない。CPUの動作周波数933MHz,主記憶容量504MバイトのWindowsノートPCでも,オーディオ品質に問題があることがあった。キーボードがあるので,文字チャットならば,PCと同じように文字を入力できる。ただし,Windows XPのデスクトップと同じようなルック・アンド・フィールは,画面が小さいので所詮望むべくもない。複数のチャット・ウインドウを開けている場合は当然切り替えて使うことになる。

地下鉄,新幹線でのPHS

 都営三田線では,走行中でも駅間距離が短いとPHSでネット接続したままWebメールを使用できる。駅構内なら問題なくネットに接続できる。ストリーム受信は実効速度が遅いため,無理である。
 新幹線の場合は,走行中は接続できないが,駅に停車中はネット接続可能。旅客機の乗客がネット接続できる時代なのに,依然として走行中の新幹線ではネット利用ができない現状は何とか改善される見込みはないのだろうか?