官房長官がWinnyの使用を控えるよう発言した3月15日以降,テレビや一般紙/誌でも盛んにWinnyが取り上げられるようになった。発言が新聞などで報じられた翌日,ある知人が言った。「これだけ話題になっているのになぜ『ITpro』では取り上げないの?」。

 3月15日以降はもちろん,それ以前も,ITproではWinny関連の記事を掲載している。何を根拠にそんなことを言うのかとたずねると,「ITproサイトの検索機能で調べたが,それらしい記事は見つからなかった」という。おかしい。「Winny」で検索をかけると,Winny関連の記事が何本も表示される。

 しかし,さらに話を聞いて合点がいった。その人は「Winny」ではなく,「ウィニー」で検索していたのだった。

 確かに,ITproの記事では「Winny」と表記しているので,「ウィニー」では検索に引っかからない。筆者は以前から「Winny」と書いてきたので違和感がなかったが,実はこの知人のように「Winny」ではなく「ウィニー」と認識している人は多い。過去に掲載した関連記事を慌てて検索し,いずれの記事でも,初出では「Winny(ウィニー)」と表記するようにした。

 「記事を書く以上,1人でも多くの人に読んでもらいたい。いつもITproにアクセスしてくれる人はもちろん,できればそれ以外の人にも読んでもらいたい」---。そう願ってやまないのに,一方では,「ITproの読者なら,この説明はしなくてもよいだろう」と,用語の説明や読み方などを省いてしまうことがよくある。ITpro読者以外のことを考えていない。恐ろしいほどの矛盾である。

 今回の「Winny」が“好例”だ。以前のままだったら,Googleなどで「ウィニー」を調べる人には,ITproの記事にアクセスしてもらうことはほとんどできなかった。知人に感謝するとともに,指摘されるまでは気づかなかった自分がふがいない。

 1人でも多くの人に記事を読んでもらうためには,内容はもちろん重要であるが,それに加えて,それ相応の心遣いが必要だ。“本筋”とは異なるが,一連のWinny報道で私が得た教訓の一つである。