■大阪府池田市では、交通カードとして普及している「PiTaPaカード」を全国で初めて入退室管理に利用している。発行手数料が無料になるなど、コストの低さに着目した。ただし、取得を強制できないなどの理由で全員が利用しておらず、ビジター用カードを貸与するなど、運用面でカバーしている。(本間康裕=コンピュータ・ネットワーク局編集委員)

※ この記事は『日経BPガバメントテクノロジー』第11号(2006年4月1日発行)に掲載されたものです。


大阪府池田市
藤田雅也氏の写真
池田市総合政策部
IT政策課課長
藤田雅也氏
石井伸之氏の写真
池田市総合政策部
IT政策課主査
石井伸之氏

 大阪府池田市の市役所は、阪急電鉄宝塚線の池田駅の近くにあり、駅から市役所の本庁舎までずっと歩行者用の通路が延びている。電車で通勤している市の職員は、池田駅の改札機に非接触ICカードの「PiTaPa(ピタパ)カード」をかざして通過してから、この通路を数分歩く。ところが本庁舎に入ってから、もう一度PiTaPaカードを取り出して、エレベーターホール入り口の壁に備え付けられたカードリーダーにかざす。「ピッ」という音を確認した後、エレベーターに乗ってそれぞれの職場へ向かう……こんな光景が毎朝繰り返される。

 なぜ、庁舎内のエレベーターに乗るのに電車用のICカードが必要なのか。実は池田市は、PiTaPaカードを庁舎や各職場のオフィスへの入退室管理に利用している。こうした目的でPiTaPaカードを採用したのは、全国の自治体で池田市が初めてだという。2005年11月17日から試験的に運用を始め、2006年1月4日に本格運用を開始した(PiTaPaカードの解説は5ページの囲み記事参照)。

■個人情報の保護が第一の目的
 リアルタイムで在庁者が分かる

 池田市がICカードでの入退室管理を始めたのは、セキュリティの向上を狙ったもの。民間企業に限らず官公庁での個人情報漏えい事件が頻発しており、「池田市でも対策を強化する必要を感じた」(池田市総合政策部IT政策課の藤田雅也課長)のが動機だという。

 池田市の庁舎は7階建てで、2階以上の全フロアにオフィススペースがある。その出入り口の扉全部に、自動ロック機能のついたPiTaPaのカードリーダーを設置した(図1)。2階と3階に2カ所ずつ、4階から7階まではそれぞれ1カ所ずつ、合計8カ所ある。このロックは、午前7時から午後6時30分の間は開いているが、こ れ以外の時間帯にオフィススペースに入る際には、PiTaPaカードで開錠する必要がある(図1)

(注1)本庁舎以外に勤務する職員やカードを忘れた職員は、庁舎内でしか利用できない入退室機能のみの「ビジター用カード」を、受付で申請して使用する。

■図1 池田市の入退庁管理システムの概略図
池田市の入退庁管理システムの概略図