表1 UHF帯ICタグシステムの主な規格(日本)

 UHF帯ICタグシステムを実環境で使用するには、既存の無線通信システムとの電波干渉を回避しなければならない。そのうえで、複数のリーダー/ライター(R/W)を同じ場所で使用したときのR/W間の干渉も回避する必要がある。2回目となる本稿では、総務省が作成した他の無線システムとの干渉を回避する技術条件と、R/W間の干渉を回避するための共用化条件の概要を、渡辺氏の講演を基に紹介する。

総務省、2段階に分けて技術基準を作成

 UHF帯ICタグシステムには、無線局免許が必要な高出力型と、免許が不要の低出力型がある。使用できる周波数帯域は高出力型が952M~954MHzの2MHz帯、低出力型が952M~955MHzの3MHz帯だ。

 総務省が2005年4月に行った省令改正では、高出力型の免許制のシステムが利用可能になった。ただしこの改正省令では、R/W間の干渉を防ぐ共用化技術は盛り込まず、携帯電話やPHSなど他の無線通信サービスとの干渉を回避する技術条件だけを定めた。

 共用化技術も含めたUHF帯ICタグシステムの技術条件が固まったのが、2006年1月の省令改正である。これにより、共用化技術に準拠した高出力型システムは登録制で利用が可能になった。さらに低出力型システムについても、共用化条件に準拠することを前提に、免許不要で利用できるようになった。

使用する周波数を分けるチャンネル設定

 それでは、R/W間の干渉を回避する共用化技術とは、どのようなものか。渡辺氏の講演から、その仕組みを簡単に見てみよう。

 例えばR/W(A)とICタグ(A)が通信しているときに、R/W(B)がICタグ(A)と通信を始めたという状況を考えてみよう。この状況でR/W(A)とR/W(B)が同じ周波数を使っていると干渉し、通信できなくなる。

 一方、R/W(A)がICタグ(A)からの反射波を受信中にICタグ(B)の反射波を受けると、どちらのICタグと通信しているのかが分からなくなってしまう。ICタグシステムの電波干渉にはこのほかにもさまざまなタイプがあるが、「最も大きな問題は、前者のR/W同士の干渉をいかに回避するか」(渡辺氏)である。