今回は,車の「カーテシ・ランプ」を作ります。カーテシ・ランプとは,ドアの内側に付いていて,ドアの開閉と連動して点灯するランプです。ドアを開けたときに,後方にそれを知らせたり,夜暗いときに足下を照らしたりします。多くの高級車には付いているのですが,大衆車には付いていないことが多く,私の車にも付いていないので,自作することにしました。

 せっかく自作するので,取り付け位置を一般的なカーテシ・ランプとは変えて,ドア側面にしました(図1)。これならドアを少し開けただけでも後方にそれを知らせることができます。


図1●ドアの内張側面に赤色LEDを取り付け,ドアの開閉と連動して点灯するようにした

赤色LEDを5本直列

 危険を知らせる目的もあるので,今回は直径5mmの赤色LEDを使います。今回使った赤色LEDのVF(順方向電圧)は,2.0V(MAX 2.5V)です。車のバッテリは12~14V程度の電圧があるので,直列につないで6~7個光らせそうです。実際に私の車のバッテリ電圧を測ったところ,エンジン停止時は12.1~12.4V,走行時は14.0~14.3Vでした。そこで今回は,5本のLEDを直列につなぎ,電流を制限するのに200Ωの抵抗を使いました。エンジン稼働時停止時で多少明るさが変動しても,常時点灯させるランプではないので問題はありません。

 まずは,5本のLEDを,適当な長さのリード線を使って直列につなぎます。リード線とLEDの端子をハンダ付けし,絶縁のためにその部分を熱収縮チューブで覆います(図2)。ビニール・テープでもよいのですが,見た目(実際に取り付けた跡は見えなくなりますが)と確実性を取って,熱収縮チューブを使いました。ビニール・テープでは,はがれてしまうかもしれません。

 
図2a●LEDを直列に接続する
図は2本をつないだところ。実際には5本のLEDを直列につなぐ。熱収縮チューブを入れてからハンダ付けする。

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  図2b●ハンダ付け後,熱収縮チューブをハンダごてで熱して,絶縁する
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 5本直列につないだLEDの両端には,車のドア・スイッチ・ラインから電源を取るための,少々長めのリード線をつなぎます。そして,リード線の先端には,ギボシ端子を付けます。ギボシ端子にはオスとメスがあり,電源に近い側にメス,電源から遠い側にオスを使います。従って,LEDのリード線にはオスのギボシ端子を付けます(図3)。通常ギボシ端子をリード線に付けるときには圧着しますが,私はハンダ付けしました。


図3●リード線の先端にギボシ端子をハンダ付けした

ドアの内張をはがし,LEDを埋める

 LEDを用意できたら,それをドアの内張に埋め込みます。そのためにはドアの内張を外す必要がありますが,慣れれば簡単でした(実際に作業する場合は,ディーラーなどで作業手順を教えてもらい,自己責任で行ってください)。私の車「ホンダ フィット」は,肘掛け部分のビスを外したあとは,力業ではずれました。ホームセンターなどで「内張はがし」が売っていますが,これはドアと内張の間の隙間に差し込んで,力ずくではがすための道具です。私は素手ではがしましたが,こんなときに学生時代に鍛えた握力が役立ちました。

 内張がはがれたら,LEDを埋めるための穴を開けます。今回は5mmのLEDを使いますので,5mmのドリルで開けます。砲弾型のLEDには,レンズ部分の下端(リード線の付け根部分)が少々太くなっており,これがちょうど引っかかって穴からLEDが抜けないようにできます。自分が取り付けたいように穴を開けたら,LEDを内側から差し込み,ホットボンドで固定します(図4)。穴を開けてしまったら元に戻せませんので,自己責任で作業してください。私は,後方と下方を照らすように取り付けました。ただ,目印を付けずに穴開け作業をしたので,少しゆがんでしまいました。こういうことは横着しない方が良さそうです。


図4a●ドア内張側面に5mmの穴を開けてLEDを差し込み,ホットボンドで固定した
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図4b●ホットボンドを付けるための「グルーガン」
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ドア・スイッチ・ラインから電源を取る

 次に,ドアの開閉に連動して点灯させるため,ドア・スイッチの信号線にLEDのリード線を割り込ませます。LEDで約20mA消費しますが,この程度ならばリレーを使って電源をバッテリから引く必要はないと判断しました。

 まず,リード線をドア・ヒンジ部分に通します。蛇腹があるのでその中を通すのですが,今回はどうしても通せませんでした。仕方がないので蛇腹の外を通しました。こうすると,雨に濡れたり,ヒンジ部分のエッジでリード線が傷つきドア(-電位)に接触するとショートしたりしますので,危険です。私は蛇腹の外を通してしまいましたが,オススメしません(図5)。なお,LEDのリード線をそのまま室内に導くのではなく,両端にギボシ端子を付けた中継用の長いリード線を作り,それをドアのヒンジ部分に通すと,LEDには短めのリード線を付けておけば済むので作業が比較的楽です。


図5●LEDのリード線をドアのヒンジ部分に通して室内に導く

 私のフィットの場合,ドア・スイッチの信号線は,ドアが閉まっているときには「+」,ドアが開いているときに「-」でした。そのため,LEDの+端子を常時電源(バッテリ)に,-端子をドア・スイッチの信号線に割り込ませます。既存のリード線に割り込ませるには,専用のパーツが売られているのでそれを使いました。リード線途中の被覆をはがしてハンダ付けしてもかまいませんが,専用パーツを使うと簡単です(図6)。ただし圧着なので,利用するリード線の太さに合ったものを使わないと,接触不良の原因になってしまいます。


図6a●ドア・スイッチの信号線にLEDのリード線を接続する
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図6b●ドア・スイッチの信号線にリード線を接続するときに使った配線コネクタ
使用するリード線の太さに応じて大きさが分かれているので注意。

 この時点で,ドアを開けるとLEDが光り,ドアを閉めるとLEDが消えます(図7)。このことが確認できたら,ドアの内張を元に戻します。フィットはドアが4枚あるので,この作業をあと3回繰り返しました。


図7●ドア内張に付けたLEDが点灯するのを確認
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 なお,フィットは,前席助手席側と後席左右の,合計3つについて,ドア・スイッチの信号線が共用されています。そのため,これら3つのドアのうち1つでも開いていると,3つのドアに付けたLEDがすべて点灯します。これを防ぐ方法もありますが,オリジナルのドア・スイッチ信号線を切らなければならないので,今回はやめておきました。3つ同時に点灯しても,消費電流は約60mAなので,問題ないと判断しました。

VTECインジケータを取り付け

 ドアの内張をはがしたついでに,VTECインジケータも付けてみました。私のフィットは1.5Lエンジンのタイプなので,「L15A」型のVTECエンジンが載っています。ただし,私が以前乗っていた「B18C '96 SpecR」型のエンジンや「H22A」型のエンジンと異なり,スポーツ・タイプのいわゆるDOHC VTECではありません。エンジン回転数を高めても,あまり劇的な変化は感じられないので,視覚的だけでも「ハイカムに切り替わった」という雰囲気を味わおうと思ったわけです。

 VTECエンジンの場合,ハイカムに切り替わったことは,コンピュータのVTECソレノイド信号から得られます(図8)。従って,コンピュータのVTECソレノイド信号にLEDを割り込ませれば,ハイカムに切り替わったときにそのLEDが光ります。


図8●コンピュータのVTECソレノイド信号を,配線コネクタを使って取り出す
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 今回は青色LEDを1個使い,電流制限用に1kΩの抵抗を使いました。エンジン稼働時のバッテリ電圧を14V,LEDのVFを3.7Vとすると,約10mA流れる計算です。計算方法は,次のようなオームの法則により

I(電流) = E(電圧)÷ R(抵抗)

ここでは,抵抗の電圧降下が 14-3.7 V,抵抗値が1kΩなので,電流は10.3÷1000=0.01(A)というわけです。20mA流したのではまぶしくて運転の支障になると思い,多少暗めに点灯させることにしました。

 装着位置は,ステアリングとスピード・メーターの間。ステアリング・コラムの上端です。このカバーに5mmの穴を開け,内側からLEDを通してホットボンドで固定しました(図9)。


図9a●ステアリング・コラムの上端に青色LEDを取り付けた
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図9b●5mmのドリルで穴を開け,内側からLEDを差し込んでホットボンドで固定した
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 L15A型のVTECエンジンの場合,実走しないと(負荷がかからないと)ハイカムには切り替わらないようです。停車時にいくらエンジンを吹かしてもLEDが光らないので,失敗したかと焦りましたが,実走すると見事に光りました(図10)。


図10●エンジン回転数を上げると,ハイカムに切り替わり,LEDが点灯した

 ただ,最初はB18C型エンジンのときのような雰囲気を視覚だけでも味わおうと思って付けたのですが,結果は逆でした。フィットには平均燃費計が付いているのですが,VTECインジケータが点灯すると,みるみる燃費が悪くなっていきます。そのため今では,なるべくVTECインジケータが点灯しないように運転してしまい,好燃費走行するためのインジケータになってしまっています。

 今回の工作にかかった費用は次の通りです(価格は販売店などにより異なります)。

●カーテシ・ランプ(約1000円)
・赤色LED 20個         400円
・抵抗 4個            40円
・ギボシ端子 オス/メス 各16個 480円
・配線コネクタ 4個       120円
・熱収縮チューブ        少々
・リード線           少々

●VTECインジケータ(約150円)
・青色LED 1個          50円
・抵抗 1個            10円
・ギボシ端子 オス/メス 各2個  60円
・配線コネクタ 1個        30円
・熱収縮チューブ        少々
・リード線           少々