ネットワークを作るときに欠かせない装置が,LANスイッチ(スイッチ)とルーターです。この二つの装置,見た目はあまり変わりません。いずれも箱型のきょう体にポートが付いており,そこにケーブルを差し込んで使います。しかも,「データを転送する」という点では,役割も変わりません。スイッチとルーターは,どこが違うのでしょうか。

扱うデータの種類が違う

 たしかにスイッチとルーターは,「データを転送する装置」という点では同じです。しかし,それぞれが扱うデータの種類が違います。スイッチはMAC(マック)フレーム,ルーターはIPパケットを扱います。

 それぞれをもう少し具体的に説明しましょう。スイッチは,イーサネットで使うMACフレームを転送する装置です。MACフレームに記述されているあて先MACアドレスを見て,そのあて先MACアドレスを持つコンピュータにMACフレームを転送します。LANスイッチは,MACアドレスと転送先ポートの対応表を持っており,この対応表を基にMACフレームを転送するのです。

 一方,ルーターはデータ転送の判断材料として,MACアドレスではなくIPアドレスを利用します。IPパケットに記述されているあて先IPアドレスを見て,適切なコンピュータにパケットを転送します。ルーターは,IPアドレスの範囲とIPパケットの転送先を対応付けた経路表を持っており,この経路表によって,IPパケットをどこへ送り出せばいいかがわかるようになっています。

 このように,スイッチはMACフレームのMACアドレスを見て,ルーターはIPパケットのIPアドレスを見て,データの転送先を判断します。それぞれ,データを転送するときに使う情報が違うのです。

 スイッチとルーターは,そもそもネットワークにおける役割も違います。

 スイッチは,LANを構成するために使うネットワーク機器です。LANに参加するコンピュータをつないで,コンピュータ同士がイーサネットで通信できるようにします。

 一方のルーターは,LAN同士をつなぐために使うネットワーク機器です。ルーターの役割は,個々のLANをつないで,それぞれのLANにつながっているコンピュータ同士が通信できるようにすることです。

LANを作るスイッチ,LANをつなぐルーター

 コンピュータ通信では,この二つの役割が連携して,最終目的地にデータを運ぶようになっています。LANを構成する装置(スイッチ)がなければそもそもコンピュータをネットワークに参加させることができません。そして,LAN同士をつなぐ装置(ルーター)がないと,LANを越えたあて先までデータを運ぶことができないのです。

 データのあて先を判断してそのデータを転送するという点では,スイッチもルーターも同じです。しかし,それぞれが違う役割を果たして,大規模なネットワークが作られるわけです。