アクセス解析ツールを外為どっとコムに販売したマクニカの営業モットーは、顧客の要求にすぐ応える「オンデマンド営業」。Webで資料を請求した顧客と10分後には商談を始めていた。

=文中敬称略


 ライブドア事件が、日本の株式市場を揺さぶった1月下旬。外国為替保証金取引(FX)のネット取引で最大手である、外為どっとコムのWebサイトは、アクセスの急増でにぎわっていた。

 日本株だけに依存しては危ない——。同社のサイトに押し寄せたのは、市場の乱高下に反応した個人投資家たちだった。この局面で、マクニカが販売したWebサイトのアクセス解析ツール「SiteCatalyst」がさっそく大活躍した。

 「来訪者は取引を真剣に検討しているな。会社概要のアクセス数が急増した」「投資関係のブログから来訪者が増えている」——。広告・ホームページグループチーフの斉藤之雄は改めて感心した。使い始めて1カ月足らずだが、SiteCatalystは、こんな来訪者の動きを手に取るように見せてくれた。 教育は不要、すぐ使いたい

 斉藤が、解析ツールを乗り換える検討に入ったのは2005年9月のこと。ツールを活用する目的の1つは、「サイトの来訪者が口座を開設するまでの動き」をつかむことである。ニュース1つでアクセス数が急変することもあるのに、当時使っていたツールはログ解析に1カ月もかかっていた。

 候補選びに当たり、斉藤はベンダーや販売代理店への資料請求を行った。候補は米オムニチュアの「SiteCatalyst」、米クリックトラックスの「ClickTracks」、デジタルフォレストの「Visionalist」、米ウェブトレンズ「WebTrends」の4つ。SiteCatalystとVisionalistがASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)サービス、残る2つがパッケージである。斉藤が判定を下す、ベンダー選別の“トーナメント戦”が始まった。

 まず、SiteCatalystの代理店は当時3社あった。どの会社とも取引はなく、斉藤は各社に資料を請求した。この三つ巴の“1回戦”は最初のコンタクトで勝負があった。

 3社のうちソフトバンクBBからは、熱心な営業から連絡が来た。話を聞くと「まず当社のトレーニングを受講して下さい」と言う。同社は、開発元のノウハウを輸入した教育プログラム「Omniture University」を売り物にしていた。

 斉藤は教育が必須という言い方に違和感を覚えたし、スタッフの日常業務は忙しい。ベンダーの営業戦略に付き合う気はなかった。熱心な営業から何度か電話があったが、「今なら受講料金がお得ですよ」と同じことを言う。そんな営業の来訪を、斉藤は断り続けた。

資料請求の直後に電話が来る

 2社目のアイレップにも、斉藤は「自社の都合の押しつけ」を感じた。営業は電話口で「アクセス解析と併せて、SEO解析からやらせてほしい」と提案してきた。

 SEO(検索エンジン最適化)とは「Google」などの検索サイトで、自社サイトを上位に導く技法のことだ。彼らの強みであることは分かるが、SEOに独自で取り組んでいた斉藤には欲しい提案ではない。それ以上の連絡は取らなかった。

 もっとも、3社目のマクニカが初回から得点を稼がなければ、斉藤はすぐには他の2社を見切らなかった。そのくらい、同社のWebサービスプロジェクト マーケティングの鈴木富士雄との出会いに、斉藤は新鮮な驚きを感じた。Webでの資料請求から、10分もせずに鈴木から電話が来たのだ。仕事がら、Web関連ベンダーとの付き合いは多いが、「生身の人間がすぐ連絡」という文化の会社は珍しい。




本記事は日経ソリューションビジネス2006年4月15日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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