Pict3.IPが上下の層の違いを吸収
Pict3.IPが上下の層の違いを吸収
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下位層や上位層の違いをどのように吸収する?

 ネットワーク層に必要な5番目の機能が,上位層や下位層の違いを吸収する機能です。

 相互接続されたネットワークは,さまざまな通信方式が使われるのがふつうです。例えば,家庭からプロバイダまでの経路を見ても,イーサネットのLANに接続されたコンピュータから,電話線を使ったADSL回線を経由して,プロバイダのネットワークに接続されます。プロバイダ間は専用線でつながれているかもしれません。ネットワーク層はこうした物理層など下位層の違いを吸収する機能を持つ必要があります。

 一方,上位層の違いを吸収するとは,ネットワークを使って送るデータの種類や送り方を問わないという意味です。ネットワーク層が上位層の違いを吸収する機能を持っていれば,コンピュータ間でどんな種類のデータを送っても,どのように送ってもかまわないわけです。実際のインターネットもいろいろな用途に使われています。これが可能なのはネットワーク層(IP)に上位層の違いを吸収する機能があるからです(pict.3[拡大表示])。

 このように異なる各種の機能をネットワーク層で相互に接続することをインターネットワーキングと呼びます。ネットワーク層は多様な上位層と多様な下位層をつなぐ役割をしています。このため,IPをワイングラスのくびれた柄の部分に例えることもあります。


●筆者:水野 忠則(みずの ただのり)氏
静岡大学創造科学技術大学院 大学院長・教授。情報処理学会フェロー,監事。現在の研究分野はモバイル&ユビキタス・コンピューティング,情報ネットワークなど
●筆者:井手口 哲夫(いでぐち てつお)氏
愛知県立大学情報科学部教授。現在の研究分野はLANや広域ネットワークのインターネットワーキング技術,ネットワーク・アーキテクチャ,モバイル・ネットワークなど
●イラストレータ:なかがわ みさこ
日経NETWORK誌掲載のイラストを,創刊号以来担当している。ホームページはhttp://creator-m.com/misako/