◆今回の注目NEWS◆

◎「新地方公会計制度研究会」の発足(総務省、4月4日)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060404_4.html

【ニュースの概要】総務省が「新地方公会計制度研究会」を発足、4月5日に第1回会合を実施した。検討内容は、地方の公会計制度の現状と評価、企業会計の手法を活用した財務書類の基準、企業会計の手法を活用した財務書類の整備など。


◆このNEWSのツボ◆

 地方自治体の発生主義・複式簿記による新しい会計方式、いわゆる「公会計」については、本稿でも何度か触れてきた。もともと、この話が注目を集めることになったのは、東京都が複式簿記・発生主義の会計諸表を「冷徹な行政ツールとして採用すべきである旨を2001年に公表し、その後、岐阜県など先導的な自治体が全面的に導入を進めてきたことで注目を集めてきた。

◎機能するバランスシート~都の経営を改革する冷徹用具(東京都)
http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/SHOUSAI/70B4A100.HTM

 総務省においても、地方自治体のバランスシートと行政コスト計算書(企業で言う「損益計算書=PL」に相当)の作成のための研究、ガイドラインなどを作成し、その状況を毎年公表していおり、総務省の資料によれば、都道府県の、ほぼ全てがバランスシートと行政コスト計算書を作成し、市町村でも半数に近い自治体で作成が行われている。さらに最近では、第三セクターや現業部門を含めた「連結」の数値も計算しているところが多いようである。

◎地方公共団体のバランスシート等の作成状況(総務省)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/pdf/050622_5.pdf 

 今回発足した「新地方公会計制度研究会」の議論は、公会計の制度や開示項目などについて、自治体の債務圧縮のために、さらに議論を深めるということが目的のようである。

 国も地方も「大きな借金」にあえぐ状況で、適切な会計制度によって、その実態を明らかにし、適切な財政運営をするために会計を駆使する…という発想、方向性は悪くない……。ただ、最大の問題は、「いかんせん遅すぎる」ということではないだろうか?

 上述の総務省の資料は、2005年6月22日に公表されたものであるが、そこで調査されているのは「2003年度の状況」である。しかも、その中には「作成途中」の団体の数値を含んでいる。つまり、会計年度が終了して、1年経っても、まだ決算書を作成中の団体があるということである。

 別に民間の方が立派だという気もないが、民間企業であれば、早い会社は今年3月の決算が、4月末には作成公表される。全ての公開企業は、決算終了日から2カ月内には、これを確定させ、3カ月内には株主総会を開催し、これを報告しなければならない。それは当たり前である。不適切な経営が行われていて、これをたださなければならない時に、その議論のもとになるべきデータが1年以上前のデータでは、機動的な経営などできるわけがない。

 公会計を財政の適切な運営のために活用していこうという方針自体は適切なものと考えられる。あとは「時間」の概念をこれに持ち込んでいくことが重要なのではないだろうか?

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

東京大学経済学部卒。通商産業省(現 経済産業省)に22年間勤務した後、2000年7月に同省を退職。同年8月にコンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はウッドランド社長、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営コンサルティング、IT戦略コンサルティングまで幅広い領域で活動する。