企業の無線LAN利用拡大に伴い、外部からの電波干渉が問題となる事例が増えています。特に無線IP電話にとって、電波干渉は厄介な存在です。音切れといった音声品質の劣化を招き、即座に“障害”と認識されるからです。6000台もの無線IP電話を導入した大阪ガスも、この電波干渉に悩まされました。
怖いのは、導入当初は問題なくても、あとから電波が飛んでくるようになる可能性があることです。安定して動作していた無線IP電話システムでも、基地局の配置や周波数などの変更を迫られることになりかねません。この変更作業は容易ではありませんし、以前と同じ環境を作れる保証もありません。こういった電波干渉の問題を救済するためのツールが登場しそうです。それが、“透明なフィルム”です。
現行のフィルムは使いにくい
フィルムというのは、ビルなどの窓に張り、近隣のビルから飛んでくる電波を遮断するものです。遮断といっても完全に遮るわけではなく、電波を減衰させています。この電波遮断フィルム自体は以前からありますが、ちょっと使いにくいというものでした。
電波遮断フィルムには、特定周波数の電波だけ遮断するタイプと全周波数の電波を遮断するタイプの2種類があります。全周波数を遮断するタイプを窓に張ると携帯電話も使えなくなるため、普通のオフィスには向いていません。
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実は、この模様や色に、特定周波数帯の電波を遮断する仕掛けが隠されているのです。フィルムに鉄分を含ませ、この鉄分が形どる模様によって、特定の周波数の電波だけを遮断しているのです。アンテナをフィルムに印刷しているとわかりやすいかもしれません。アンテナが不要な電波を吸収しているわけです。
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このように、鉄分で仕掛けを作っているため、「フィルムの成分や素材の影響により、色つきの模様ができる」(NSKの塚本 章営業開発部担当課長)というのです。NSKは、インテリジェント・ビルなどの電波干渉対策に力を入れており、電波遮断フィルムを取り扱っている企業です。
色つき模様入りのフィルムを窓に張るのは抵抗があります。テナントの場合、ビルのオーナーの了解も得る必要があるため、実際にはなかなか張りにくいようです。
特定周波数帯を遮断するフィルムの透明化が見えてきた
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透明フィルムが登場すれば、無線IP電話を救うツールとなるため、早い製品化を期待したいところです。