●生産リードタイムが4分の1以下に
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●トヨタ生産方式の導入で、FDKは調達先から顧客企業までのSCMを抜本的に改革
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●FDKにみる業務革新のポイント
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まずはスムーズな流れを作る

 モノの流れだけでなく、情報の流れもスムーズにする。
 生産情報を伝えるのが「かんばん」である。トヨタ生産方式では、かんばんで運ばれてくる顧客からの注文情報(生産指示)に合わせてモノを作る。顧客企業や後工程がモノを引き取ると、かんばんが外れて前工程に生産情報が伝わる。

 つまり、後工程が引き取った分だけ前工程が補充していけばいい。顧客企業への即納に対応するため、出荷量の1.5倍相当の安全在庫を「ストア」に置いてはいるが、原則として予測で作るのではなく、顧客企業に一番近い工場の出荷工程に届く「実需の情報」に従ってモノを作る。

 工場では、最終工程がペースメーカーになる。そこで出荷工程の出口に「受注出荷管理板」を置き、実需を「見える化」した。ここを見れば、誰でも顧客動向が分かる。杉本社長も工場に来ると管理板を見て遅れがないかをチェックする。特定の日に受注が偏っていれば、仕事を平準化できないかの検討をする。

 ここでポイントになるのが「生産計画表」の廃止である。長期の生産見通しはあっても、「作りなさい」という指示の情報は、後工程から回ってくるかんばんだけが伝える。

 「生産計画表なしで、どうやってモノを作るのか?」。作業員は戸惑いを隠せなかった。指導の意味がさっぱり分からなかったからだ。無理もない。今までの常識は「大型設備で一度にたくさん作って安くする」。自分たちの勝手な「計画」に従って作った在庫は押し込んででも売り切る。顧客の実需という視点は抜け落ちていた。作り過ぎがかえって無駄な在庫を増やし、原価を高めていることに気づかなかった。

在庫半減、生産性は4倍に

 トヨタ生産方式の導入で目覚ましい成果を出したのは「マイクロインダクタ」と呼ばれる電子部品の生産ラインである。この部品は携帯電話に使われている。

 工場の出口に向かって、まっすぐに伸びる生産ラインを、モノと情報が逆向きに一直線に流れる(冒頭の写真)。実需に合わせて作るため、生産ロットは2年前の15分の1まで小さくした。これで工程間の仕掛かり在庫は半減した。

 ロットサイズが小さくなれば、加工時間は短くなる。工程内の無駄な動きもなくなったため、生産リードタイムは30日から7日まで4分の1以下に減った。逆に生産性(出荷高から購入した資材費を引いて工数で割ったもの)は4倍になっている。

 岩城氏は工場内の流れができたら、「次は調達先とFDK、さらにFDKと顧客企業の流れをつなぎなさい」と指導している。SCM(サプライチェーン・マネジメント)そのものである。ここまでやるには、調達先の部品メーカーや顧客企業の携帯電話やデジタルカメラのメーカーにも、かんばんを使ってもらわなければならない。FDKはトヨタ生産方式で生産革新しようとしている内部事情を社外に説明し、協力を求めていった。

 物流も調達先と顧客企業を交えて見直す必要が出てくる。既に湖西地区では、周辺の調達先や顧客企業と共同で混載便を用意し、各社を巡回しながら定時・定ルートで部品や製品を規則正しく運び始めた。FDKの改革はここまできた。