都会的な生活スタイルを提案する女性誌のサイト情報。紙面の雰囲気が伝わるスタイルだ<br>REAL SIMPLE JAPAN<br>http://www.realsimple.jp/
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情報収集からスタイル作りの過程は互いに支え合って進んでいく。この考え方に沿うと、機能とデザインがトレードオフの関係ではないことがわかる。ユーザーにみえているのはスタイルなのでその重要性はいうまでもないが、スタイルと機能が一体だと考えれば単なる見かけの問題でないことも理解できるだろう
情報収集からスタイル作りの過程は互いに支え合って進んでいく。この考え方に沿うと、機能とデザインがトレードオフの関係ではないことがわかる。ユーザーにみえているのはスタイルなのでその重要性はいうまでもないが、スタイルと機能が一体だと考えれば単なる見かけの問題でないことも理解できるだろう
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 コンテンツにコードにスタイルに・・・。Webデザインは3層に分かれた工程の集合だということがわかっていただけただろうか。1ユーザーであるうちはブラウザに表示するただの面だったWebも、制作する側の視点でみると度重なる基礎工程に支えられた建物のようにみえてくるものだ。と感慨にふけってはみたものの、同じ建物ならしゃれた外観のほうに引かれるのが人情だろう。

 しゃれていると感じること、つまり、好ましさは表面的なスタイルの状態に依るところが大きい。機能美と言うときですら、気持ちの大部分は見た目に影響を受けているはずだ。Webデザインの中で特にスタイルが負う重大な役割の1つに、好ましさの表出がある。

ブランディングってなに?

 企業情報や,問い合わせ先を明記した企業のサイトは「ブランドサイト」と呼ばれる。なぜそう呼ぶのかは置いておくとして、そもそもブランドとはなんだろうか。定義によれば、ブランディング(ブランドを形成する事)とは、商品や企業名の認知・定着を促進する目的で作る長期戦略のことだという。

 CMのように限られた時間で限られた情報を提供するより、一度立ち上げたら何度も使えるWebサイトは長期戦にぴったりだ。ところでブランディングは「作る」ものではなく「醸成」するものとも言われている。問い合わせに対する対応、わかりやすい商品説明。ブランドイメージを醸し出す要素はたくさんあるが、やはり重要なのは見た目の好ましさに他ならない。なぜかといえば、見た目、つまり視覚情報は文字情報よりも素早くユーザーに伝わるものだからだ。人は文字より絵を先に見るという理はWebサイトをも支配しているのである。

 サイトのスタイルがユーザーの求める状態になっていないと、ブランドイメージを醸す間もなくユーザーはウィンドーを閉じてしまうだろう。そういう事態を引き起こさないためにもユーザーを引きつけ、滞在時間をのばすような優れたスタイルは必須だ。ブランドサイトとは、スタイリングでユーザーを魅了して企業の存在を印象づけることに主眼を置いたサイトを指すのである(図1[拡大表示])。

情報はみかけによる

 Webの技術に精通すればするほど、「サイトの見てくれは関係ない、大切なのは機能だ」と結論付けたくなるものだ。もちろんある側面においてはそれも正しい。しかしここで考慮すべきなのは、一般のユーザーがその機能に到達するための順番であろう。ユーザーの側から見ると当然の事ながら、コンテンツはスタイルに覆われている。だから中身に到達してもらうためにもスタイルをおろそかにはできない。

 ユーザーにとって、情報はみかけによるものだ。とくに開発しているとどうしても開発工程順でサイトの価値を判断してしまうために構造、戦略、機能、ええと・・スタイル。となってしまう。情報がみかけによらないと考えられるのは、採用した通信機器のスペックやアプリケーションなどの中身について、善し悪しを判断できる開発側(あるいは情報提供側)だけだと言っても良い。Webで実践するブランディングを「顧客の問題を素早く解決するためのツール作り」と定義する考え方は一般的だけれど、サイトの見かけの良さを重視する考え方はこの定義から漏れるものでもない。見た瞬間「ああ、きれいだな」と思えるサイトはやっぱり見やすいものであり、見やすければ次の操作も飲み込みやすいものだ。

でも、どうやって?

 しかし普通は皆こう思っている。見かけの善し悪しを判断するのは主観であって客観ではない。だからそこを求めるよりも客観的な優劣を付けやすい表示速度やシステムの性能に答えを求めようと。そんな意見も「デザイン」がただの「装飾」の場合は正しいといえるかもしれない。でもデザインとは装飾でなく、使い勝手を形にすることであるから、幸いなことにこの言い方はあてはまらない。

 では、Webに適切な形を与える方法なんてあるのだろうか。ここに3つの考え方を示したい。1つは開発も含めたチーム全体がユーザーにとって見かけは重要であると認識すること、2つめは情報の配置場所も色も大きさもすべて内容の構造を無視した状態では付けられないと認識すること、3つめはWebにデザインが必要なワケ その2でも述べたようにWebが「言葉」と「スタイル」と「コード」の3つの異なる要素から成り立っていることをいつも意識すること。

 つまり、コンテンツの構造をしっかり表しているデザインがWebにとっては整理された良い見栄えを提供しているサイト、と結論付けられる。もちろんブランディングという課題もクリアできる状態だ。1からWebデザインをスタートさせる今こそ、ぜひこの考え方から初めてもらいたい。