図1 SoftEther/PacketiX VPNの概要<BR>インターネットなどのIPネットワーク上でイーサネットLANのしくみを仮想的に実現するVPNソフト。パソコンにインストールした仮想LANカードを専用サーバー上で動く仮想HUBにつなぐという,実際のLAN接続を模した形でVPN通信を行う。仮想HUBと物理的なLANカードをブリッジ接続することでリモート・アクセスやLAN間接続VPNを実現する。
図1 SoftEther/PacketiX VPNの概要<BR>インターネットなどのIPネットワーク上でイーサネットLANのしくみを仮想的に実現するVPNソフト。パソコンにインストールした仮想LANカードを専用サーバー上で動く仮想HUBにつなぐという,実際のLAN接続を模した形でVPN通信を行う。仮想HUBと物理的なLANカードをブリッジ接続することでリモート・アクセスやLAN間接続VPNを実現する。
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ルーターがなくても,Windowsパソコンが2台あれば手軽にイーサネットVPNを構築できる「SoftEther」。そのSoftEtherの後継ソフト「PacketiX VPN 2.0」が2005年12月末に正式公開された。およそ2年ぶりの新版ということで,数多くの機能追加や強化が施されているという。いったい何が変わったのかを調査した。

 「ねえねえ,このPacketiX(パケティックス) VPN2.0ってどんなVPN*ソフトなのかな?『2005年12月28日から正式版の提供を開始』と書いてあるんだけど」——。編集部に送られてきた新製品リリースの山を整理していると,通りかかったデスクがその中の1枚をひょいと拾い上げて尋ねてきた。

 「あの筑波大学の学生起業家・登大遊(のぼりだいゆう)氏が開発したSoftEther(ソフトイーサ)の後継ソフトだそうですよ」と私。

 「へぇ,そうなんだ。SoftEther1.0が出たのは,たしか2004年春だったから,ほぼ2年ぶりのバージョン・アップ*か。機能的にもかなり変わっているんだろうな」とデスクが話を振ってくる。

 「そうですね」と話を合わせた私に,すかさずデスクがたたみかけてきた。「せっかくの機会だから詳しく調べて記事にしようよ。SoftEtherの後継版が出たということで気になっている読者も多いだろうからね」。

イーサネットLANを仮想的に実現

 ADSLやFTTHなどブロードバンド・サービスの普及によって,インターネット経由で会社や家庭のLANにリモート・アクセスしたり,LAN同士をつなぐ「インターネットVPN」のニーズが高まっている。2004年に登場したSoftEtherとは,そうしたインターネットVPNの構築に使えるパソコン用のVPNソフトだった(図1[拡大表示])。

 SoftEtherは,「仮想LANカード」というVPNクライアント機能と「仮想HUB(ハブ)」というVPNサーバー機能を併せ持つソフトウエアを使いVPNを構築する。

 仮想LANカードと仮想HUB間では,LANで使うMAC(マック)フレーム*を丸ごと埋め込んだIPパケットをやりとりする。こうすることで,同じ仮想HUBにつながるパソコン同士をあたかも一つのLANにつながっているように扱える。つまり,IPネットワーク上に仮想的なイーサネットLANを構築するわけだ*

 IPパケット中のMACフレームは暗号化されるので,インターネット経由でも安全に通信できる。また,SoftEtherの仮想LANを実際のLANとつなぐことで,インターネットから家庭や職場のLANへリモート・アクセスしたり,拠点のLAN同士のVPN接続も実現する。