Bruce Schneier Counterpane Internet Security
「CRYPTO-GRAM March 15, 2006」より

 「BioBouncer」は,飲み屋(酒場,バー)向けの顔認識システムである。

 BioBouncerについて,開発元である米JAD Communication and Securityの共同設立者Jeff Dussich氏は,以下のように説明する。「クラブやバーに入る客の顔をカメラで撮影し,顔認識ソフトウエアを使って,以前トラブルを起こした客の顔写真データベースと照合する。画像が一致したら,店の警備員に通知する。一致しなかった客の顔写真は,毎晩閉店時に自動的に消去する。データベースは,VPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)を介して複数の店で共有できるため,酒癖の悪い酔っぱらいは,近辺のバーすべてで門前払いを食らうだろう」

 「(一致しなかった客の)顔写真は毎晩自動的に消す」という処理がいつまで続くか知りたくないだろうか?このデータは莫大な価値を持っている。保険会社は,ある人物が自動車事故を起こす前にバーに入ったかどうか知りたくなる。雇用主は,従業員が勤務前に酒を飲んだかどうか知りたくなる。航空機のパイロットがよい例だ。私立探偵は,「誰と誰が一緒にバーに入ったのか」を知りたくなる。警察はあらゆることを知りたがるだろう。多くの人がこのデータを欲しがる。全員が金を払ってでも手に入れようとする。

 さらにこのデータは,画像を撮影したバーの所有物になる。消すこともできるが,米Acxiomのようなデータ収集業者に売ることだって可能だ。

 当初の用途が問題になることはまずない。問題は,最初に想定していなかった使い道である。知らない間にその用途で使われ続け,気がつくと,商業ビルに入ると身元を特定されることが当たり前になる。その結果,プライバシや自由をすべて失う。

http://www.wired.com/news/technology/1,70265-0.html

Copyright (c) 2006 by Bruce Schneier.


◆オリジナル記事「Face Recognition Comes to Bars」
「CRYPTO-GRAM March 15, 2006」
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◆Bruce Schneier氏は米Counterpane Internet Securityの創業者およびCTO(最高技術責任者)です。Counterpane Internet Securityはセキュリティ監視の専業ベンダーであり,国内ではインテックと提携し,監視サービス「EINS/MSS+」を提供しています。