第1回「CIOオブ・ザ・イヤー」を受賞した大成建設の木内里美氏 [画像のクリックで拡大表示]

 「売り上げに占めるシステムコストが同業他社に比べて高過ぎる。5年間で3割削減すべきだ」。

 大成建設は2000年に、現場と情報企画部を交えてシステム戦略を洗い直す部門横断チームを設置した。2001年から社長室長(副社長)直轄の業務改革・IT導入プロジェクトに着手。業務分野で間接事務の無駄な業務を洗い出す「POWERプロジェクト」と、大型コンピュータをパソコンやUNIXベースのシステムで置き換える「IT戦略プロジェクト」を併せて実施した。

 この時、部門横断チームでの積極的な発言を買われて情報企画部長に抜てきされ、IT戦略プロジェクトの実行リーダーとなったのが、土木部門にいた木内里美氏だった。

 木内氏は業務プロセスの見直しを進めた経営企画部との二人三脚で、システム仕様を検討した。そして、大型汎用機を捨て、人事、経理・財務、調達、営業支援などの各種システムを全面的に見直し、2年間で3割のコスト削減をほぼ予定通り実現した。

 もともとは土木設計部門で港湾などの設計に携わってきた同氏だが、IT部門へ異動してリーダーをすんなりこなせたのはなぜか。どうやらその秘けつは、公私ともにアンテナを張り巡らして意欲的に情報収集を行う強い好奇心にあるようだ。

 異動後には、さっそく飲み仲間だったIT業界関係者から本音の業界情報を集めたという。そこで、「大手ベンダーやコンサルタントに丸投げのプロジェクトだけは絶対にしてはいけない」と早くから肝に銘じた。さらに、雑誌記事や口コミで、面白そうな技術を持っていそうなITベンダーを見つけると、自らアポを取って訪問するといったフットワークの軽さも発揮した。

 趣味の面では、バリ島の工芸品をこよなく愛し、運搬に手間のかかる石像(ラクササ)を個人輸入して自宅に飾るといった凝りよう。このように異文化にも旺盛な好奇心とこだわりを発揮する個性を、土木部門からITプロジェクトのリーダーへの転身でもいかんなく発揮したのだ。なお、木内氏はこのプロジェクトの手腕を評価されて、日経情報ストラテジーの第1回「CIOオブ・ザ・イヤー」を受賞している。


Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・IT用語でなく、経営用語で話をする
・簡潔に話をする、分かりやすい事例やたとえで話す
・良いことも悪いことも、事実を話す
・繰り返し話す
・全体の枠組みや方向性、結果を伝える
・提案を伝える

◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
 ユーザー企業とITベンダーは、良きパートナーでなければうまく行かない。ITベンダーには実力をつけてもらい、プロフェッショナルなレベルの提案やサポートをしてほしい。
 ところが、SIerと呼ばれる企業の情報技術者は、自ら汗をかいて実践することを忘れ、多重階層の消化型業務処理に埋もれて、高度なレベルでの技術やスキルの提供ができていない。方法論や手法も身についていない。いまだに業界で標準化された積算基準もないため、契約での合意形成で齟齬(そご)も多い。発注者であるユーザー企業もしっかりした要件定義を行なって、発注仕様書を示せるように努力する必要があるが、ITベンダーにも緊張感のある対応を望みたい。

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・新聞では、日本経済新聞、日経産業新聞、日本工業新聞
・雑誌では、日経情報ストラテジー、日経コンピュータ、土木学会誌


最高のストレス解消法は「バリコレ」
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◆最近読んだお勧めの本
・『松下の中村改革』日経産業新聞編(日本経済新聞社)
・『国家の罠』佐藤優著(新潮社)
・『国家の品格』藤原正彦著(新潮社)
・『何があっても大丈夫』桜井よしこ著(新潮社)
・『俵屋の不思議』村松友視著(幻冬社)

◆仕事に役立つお勧めのインターネットサイト
GoogleとYahooは別として…
ITpro
KEN-Platz
建設経済研究所
失敗学会
電子自治体情報
土木学会
日経Biz Financial Career Strategy
国土交通省
Wisdom

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー・学会など
・土木学会
・日経コンピュータシステム部長会(最近参加できていないのですが)
・セミナー関連は随時
ほとんどの情報収集は、人的ネットワークで紹介していただいたキーパーソンに直接お会いしてお聞きすることが多いです。

◆ストレス解消法
・スポーツはする時間が取れず、毎朝欠かさない犬の散歩くらいです。
・好きな音楽はジャンルを問いませんが、基本的にはジャスとラテン系。小曽根真さんのピアノはいいですね。実はガムランもよく聴いてます。
・最高のストレス解消法は「バリコレ」(パリコレではありません)。芸術性豊かなインドネシア・バリの工芸品や絵画などのコレクションです。毎年、現地に仕入れに行きます。