米国の2つの調査会社,米Peripheral Conceptsと米Coughlin Associatesがシステム管理者に対して行った調査によれば,システム管理者がバックアップに求めているものは「より高速な復元(リストア)」と「信頼できるアーカイビング」だという。本調査が行われるのは今年が3回目だが,興味深いことに多くのシステム管理者が,いまでもバックアップとアーカイビングを区別していないことも明らかになった。

 Peripheral ConceptsとCoughlin Associatesが行った調査は,最低でも1テラ・バイトのRAWディスク・スペースを管理しているITシステム管理者を対象としている。調査に参加した135名のシステム管理者の内の40パーセントが「バックアップからリストアまでにかかる時間」を最大の問題に挙げた。一方,別の30パーセントの回答者が「バックアップの全作業を終えるのにかかる時間」を主要な問題に挙げた。20パーセントの回答者は,「アーカイブからデータを取り出すのに必要な時間」を最も差し迫った問題に挙げた。

 Coughlin AssociatesのTom Coughlin氏は,「人々はより高速なリストアを欲している」と語る。バックアップ分野において,この欲望は2つの主要なトレンドを牽引している。まず第一に,主要なバックアップ・メディアとして,ディスクはテープに取って代わり続けている。本報告によると,容量面で見た「ディスク対テープ」の比率は,2004年が「1:2」だったのに対して,2005年は「1:1.5」に下がった。Coughlin氏は「2年以内にディスクの使用はテープの使用を上回る可能性がある」と示唆する。「ディスク製品の使用は継続的に拡大している。これは長期的なトレンドであり,今でも継続中である」(Coughlin氏)。

 第二のトレンドは,データ検索・回復を向上させるために,ストレージ製品はどんどんスマートに(賢く)なってきているということだ。Coughlin氏は「例えば,2005年秋に米Quantumは内覧会で,MFXに対応したSuper DLT(SDLT) 600規格のテープ・ドライブの新製品を公開した。MFXとは,Society of Motion Picture and Television Engineers(映画テレビ技術者協会)が開発したテープ・フォーマットの業界標準である。MFXに対応することによって,テープ・ドライブはタイム・コードなどの特定のメタデータに直接アクセスすることが可能になる。従って,ユーザーはファイル全体を読み出すことなく,特定のビデオクリップにアクセスできる。

企業内業務データ検索の世界にGoogleが進出中

 同様に2006年2月には米Googleが,米Kazeonの持つストレージのインデックスや分類技術を使用する契約を結んだ。これによりGoogleは,自社の検索能力をストレージ・インフラの奥深くまで拡大できるようになる。この提携関係を結んだ結果,Googleの検索エンジンは,ウェブやデスクトップだけでなく,企業内のサーバやストレージ装置などに保存されたデータを検索したりアクセスしたりできるようになる。また2005年10月には,米Network Applianceが,ユーザが同社のストレージ装置に保存したデータをGoogleの検索エンジンを使うような感覚で検索できるように,Kazeonのインデックス/分類技術を使用したバックアップ・ソリューションを明らかにした。

 Coughlin氏によると,これらの進歩はやがてストレージ・アーキテクチャに大きな影響を及ぼし,企業は複数のストレージ装置から情報を検索し取り出せるようになるかもしれないという。「これまでは,ストレージに関する決断は,メディアやメディア・フォーマットに関してのみ行われていた。しかし,一旦全てのストレージが検索可能になると,情報が収められているメディア自体の重要性は減少するだろう」とCoughlin氏は語る。

 今後登場するより賢いストレージ装置は,情報の取り出しやリカバリに力を発揮するだろう。しかし,バックアップ作業がより効率的なものになってきているにもかかわらず,ストレージ管理者は今でも,一定の時間内にバックアップを完了させることが難題だと考えている。調査対象者のうち32パーセントは,1時間以内に全バックアップ作業を完了できると答えた。一方,43パーセントは1~6時間時間必要だと回答した。なお2004年度のバックアップ&アーカイビング調査では,調査対象者のうち15パーセントのみが60分以内に全バックアップ作業を完了できると答えた。一方11パーセントは,全バックアップ作業に12時間以上かかると回答していた。

バックアップとアーカイビングが区別されていない

 興味深いことに,回答者のプロフィールは様々であるにもかかわらず,およそ3分の1の回答者が,バックアップとアーカイビングを区別していなかった。これは2004年の報告内容と同様である。アーカイビング・ソリューションの要素のうち,信頼性と容量,そして長期記憶保持が最も重要なものであると調査参加者は答えた。半数以上(54パーセント)の回答者は,特定のアプリケーション・データをアーカイブしている一方,57パーセントは電子メールをアーカイブしている。

 システム管理者がアーカイビングに使用するフォーマットは急激に変化している。現在,調査に参加した管理者のうち55パーセントが,アーカイブ・フォーマットにファイルを使用している。しかし回答者の80パーセントは,2年以内にディスク・ボリューム全体をアーカイビングするようになると述べている。

 バックアップとアーカイビング作業のスピードと信頼性を向上させることが,当面システム管理者の優先事項となり続けるだろう。企業は極めて重要なデータを今までよりも多く生み出しているだけでなく,新しい規制に対応するために,データをこれまでよりも長期にわたって安全にアーカイブし,簡単に取り出せるようにしなければならなくなる。向こう数年間で,バックアップとアーカイブ技術を区別する主要な要素は,使用されるメディアではなく装置内の情報になるだろう。