先日,米MicrosoftのTechnical FellowであるAnders Hejlsberg氏が応じた,ITproおよび日経ソフトウエアのインタビューの模様である。Visual Studioや.NET Framework,プログラミング言語C#の今後について語る,Hejlsberg氏の生の声を映像でお届けする。


Visual Studiio 2005とC# 2.0はどのような目標をもって開発したか(4分46秒)

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 Visual Studio 2005および,.NET Framework 2.0によって,やっとすべての機能を実現できたと感じている。マイナー・バージョンのVisual Studio 2003はバグ修正という見方もあったが,Visual Studio 2005は多くの機能を盛り込んだ。ユーザーから寄せられた要望の多くを反映させている。コーディング作業の低減やチーム開発の効率化を実現し,アプリケーションのパフォーマンスは高まっている。私がかかわった開発ツールの中でも最も大きなものになったと感じている。



C#はどこへ向かうのか(4分37秒)

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 私はこれまでの2年間,LINQプロジェクトにかかわってきた。Visual BasicやC#はデータベースとの統合へと向かっている。プログラマの75%~80%は,データベースを使っている。つまり,オブジェクト指向言語とSQLという全く構造の違う言語を使わなくてはならない状況だ。これからも,この溝を埋められるような作業を続けていく。オブジェクト指向言語とXMLデータ,リレーショナル・データベース,これらを統合するモデルを考えている。



開発ツールはどうあるべきか(3分)

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 動きがよく堅牢,そして開発効率が高い。これが求められる条件だ。そして品質の高さも求められる。案外重要なのは“楽しめる”ということ。プログラマが“楽しめる”環境になっているべきだろう。言語のデザインは,アートとサイエンスの感覚が必要になる。2つがうまく機能したときに,言語は成功するのだと思う。もちろんC#と.NETはこれらが最高にうまく機能している。



C# 3.0は何を目指しているのか(4分15秒)

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 データベースとオブジェクト指向言語のミスマッチの解消が全体としての目標だ。そして,これまでの関数型言語に研究の成果を盛り込み,オブジェクト指向言語と関数型言語の“いいとこどり”をしたいと考えている。厳密に型を宣言しない言語は,確かに簡単に学習できたりプログラミングも楽だったりするが,コンパイルの正確さやIntelliSenseの精度は悪くなる。型の厳密さは意識し続けた構造にしたい。



新しいC# 3.0は,開発者にどのような恩恵をもたらすか(3分50秒)

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 まず生産性が高まる。そしてプログラムの抽象度が高まり,プログラミングの自由度が高まる。今日のプログラムは,何(What)をしたいか,それにはどう(How)するか,を細かく指定して作成している。より抽象度を高めて,細かな指定をせずにプログラムできるようになる。



言語の機能が高くなると,学習も難しくなるのではないか(4分)

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 ソフトウエア,そしてプログラミング言語は,ハードウエアほどには進化していない。プログラミング言語の本質的な部分は,機能が高くなっても変わっていない。20年前,30年前のプログラミングの参考書が今でも十分役立っている。また,アルゴリズムなどプログラムの基本は,どの言語を選択しても同じである。どの言語から学習を始めるか,という部分をあまり考える必要はないだろう。



Visual Basic 6.0からの移行のメリットは何か(3分40秒)

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 Visual Basic 6.0は非常に優れた言語だ。しかし,作成したものを現在の様々なプラットフォームに移すことはできない。Visual Studio 2005(Visual Basic 2005)では,こうした点も考えて,前のバージョンよりも互換性を高めている。Visual Basic 6.0は優れた操作性のクライアント・アプリケーションを作成することを主眼にしていた。Visual Studio 2005では,WebサービスやASP.NETなど,できることがさらに広がり,移行のメリットは非常に大きいといえる。



趣味でプログラムをすることはあるか(1分15秒)

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 仕事が趣味を兼ねているので,あるともいえるし,ないということにもなる。純粋な趣味としては最近,ゴルフと子供と遊ぶことをしている。なかでも5歳の子供と遊ぶレゴブロックにはまっている。これは,私の昔からの趣味でもある。


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