データを駆使しながら顧客の価値観やライフスタイルを洞察する門永篤史部長代理(右)と久保田俊輔氏
データを駆使しながら顧客の価値観やライフスタイルを洞察する門永篤史部長代理(右)と久保田俊輔氏
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●JCBにみる業務革新のポイント
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 顧客分類モデルに基づいて販促ターゲットや提供する情報を抽出する仕組みだけ作って終わりにしないところが、JCBが成果を上げている秘けつといえる。

 サイコグラフィック特性を基に販促企画を立てたとしても、それはあくまで仮説にすぎない。販促効果を高めるためには、施策を実行した結果を検証しながらより精度の高い仮説を導き出していく必要がある。

 仮説を検証しやすいように、DMには必ず「共通版」を用意するのがJCBのやり方だ。顧客の嗜好に合わせて内容を変えたDMと、どの顧客にも同じ情報を提供する共通版とで顧客の反応を比較する。こうして比較の基準を設ければ、単純にDMを送った顧客のうち何人が反応したかだけを見るのに比べて、販促の効果を精ちに測れるというわけだ。

 ユニ・クリップと共通版とで顧客の反応に大きな差がなければ、カスタマイズの仕方を見直す。価値観の違いでキャッチコピーを変えても効果がないようであれば、年齢別にキャッチコピーを考えるといった別の方法を試してみる。

 販促を企画するマーケティング部門は、過去に実施した販促の内容と結果を表計算ソフトに保存。担当者同士で情報を共有し、自由に閲覧できる。

 PDCA(計画−実行−検証−見直し)サイクルを確実に回す体制を整えてきたJCBにとって、残された課題は社員の意識改革だった。顧客が購買意欲をかき立てられるような施策を練り上げられるかどうかは、どれだけ顧客の立場に立って物事を考えられるかどうかにかかっている。

 2005年4月からマーケティング部門で始めた「わかりやすさ活動」は、全社員を顧客志向へと変える風土改革にほかならない。商品やサービスそのものに加えて、それらの情報を提供するための媒体物が分かりやすいかどうかを顧客の目線で見直していくのが活動の骨子。毎月、改善点を挙げて、解決策と実行計画をまとめて、マーケティング本部長に報告する。

 改善点は原則的に1カ月以内に解決する方針を打ち出している。部署ごとに推進担当者を配置して、改善点が解決されたかをチェックするため、放ったらかしにはできない。活動を始めてから半年間で約170件の改善提案が挙がっており、すべて解決済みだという。

 門永部長代理は、「わかりやすさ活動が定着すれば顧客理解が進む。そうすればDMでも今よりもっと高い成果を得られる」と期待する。


山崎 誠氏[JCB常務 マーケティング本部長]

顧客はすべてゴールド会員

 クレジットカードの保有枚数は1人当たり平均3枚で、財布に入れて携帯する枚数となると1.9枚に減る。持ってもらうことに加えて使ってもらうことが重要になっている。

 JCBカードをメーンカードにしてもらうための戦略がCRMだ。クレジットカード業界はなかなか差異化できないなかで、ウェブやコンタクトセンター、紙媒体といろんなチャネルで幅広くCRMを展開していくのが一番の差異化になる。

 DMでお客様に合った情報を提供する技術は満足できる段階にきた。ただし、時代が変わればお客様の嗜好は変わる。そうした変化に合わせてシステムを改良していくのが今後の課題になる。

 最近は社員が自ら改善する土壌作りを進めている。「気づく」というのが大事だが、日常業務をただ流していたのではなかなかできない。仕組みを作りPDCAを回していくことが不可欠だ。当社の(ゴールド会員専用の相談窓口である)「ゴールドデスク」はよく訓練されているため評価が高い。マーケティング本部の現場でもゴールドデスクと同じ意識を持ってほしい。(談)