URLを入力するとそのサイトの“Web 2.0度”を判定してくれるページがあるという。「Web 2.0 validator」がそれだ。
試しにITproのURLを入力してみた。判定は...47ポイント中6ポイントという散々な成績である。えっ,ITproはインターネットの進歩に追随できていないのか。
焦ったが,講評を見て,少し安心した。というのも,表層的な特徴を捉えてWeb 2.0をはやし立てる風潮を笑い飛ばしている,機知に富んだジョークであることが分かったからだ。
このサイトでは,「SlashdotまたはDigg」(ソーシャル・ブックマーク・サイト)にリンクしているか,「マッシュアップ」(WebサービスのAPIを使用してカスタマイズしたアプリケーションを構築すること)や「ロングテール」(販売実績などが長い尻尾のように多様な商品にわたること)という単語があるかどうか,といった規準で点数を判定しているようだ。また,べータ版だったり,「prototype.js」といったスクリプトを呼んでいると“Web 2.0度”が上がるらしい。
ちなみに,まつもとゆきひろ氏が開発したオブジェクト指向言語「Ruby」に言及しているか,Rubyベースのフレームワーク「Ruby on Rails」(関連記事)で構築されているとWeb 2.0ポイントが高いようだ。日本人としてはうれしい限りだ。
インターネットにはこのほかにも,「2.0」に関する洗練されたウィットに満ちた素晴らしいユーモアがたくさん存在する。記者が感銘を受けた,洗練されたジョークをいくつかご紹介させていただきたい。
「Web 2.0 Business Plan Generator」は,「あなたのためにWeb 2.0っぽいビジネス・プランを生成してくれる」というソフトウエアだ。記者が試してみたところ,「人間の“つながりたい”という欲求をレバレッジ(てこの原理で拡大)する,分散Ruby on RailsベースのカレンダーWebアプリケーションを開発する」というプランを提示してくれた。そこはかとなくリアリティがあるような気がする。ちなみにWeb 2.0 Business Plan Generatorはオープンソースとしてソースコードも配布しているので,自由に拡張することも可能だ。
「Web 2.0にバグが見つかったので2.0.1をリリースした」というアナウンスもあった。「Annoucing Web 2.0.1」である。8つのバグには,それらしくトラッキングIDが振られている。
まず,自動バージョン管理システムの問題により,実際は1.0レベルだった,というのが第1のバグである。2つめのバグは,Webベースのアプリケーションでは,バージョンは役に立たない,ということ。なぜなら,前のバージョンに戻すわけにはいかないからだ。
3つめのバグは,名前がヘンなこと。でもこれはバグではなく仕様だった。4つめの問題は,地図ベースのアプリケーションがあまりにも多すぎること,だという。創造性の欠如が原因らしい。長くなるので途中は省略して,最後のバグは「利益」である。このバグはまだ修正されておらず,作業中とのことだ。
日本にも優れたユーモア・センスを持つ方々が多数おられる。
昨年末になるが,「Binary 2.0」というカンファレンスが開かれている。レポートによれば,日本の最高峰のプログラマたちが多数集まる,熱気にあふれたカンファレンスだったという。Binary 2.0とは何なのかは誰も知らないようなのだが,実行時に自分自身を書き換えるプログラミング手法の発表や,FPGA(Field Programmable Gate Array)上でのデバッガによるプレゼンテーションといった,バイナリ(機械語)を操作する高度な技術を駆使した発表が多数行われたとのことだ。
ジョーク・サイト「bogusnews」は「Web 2.0にセキュリティホール発覚 次期バージョンで改修」というエントリを載せている。「Web 2.0の『一般人にはなんのことだか意味がさっぱりわからない』という弱点を突くことで,大量のbuzzwordを押しつけてバッファ・オーバーフローを引き起こし,相手に『なんかすごいことらしい』と幻想を見せることが可能」という恐るべきセキュリティ・ホールだという。
国内外のさまざまな「2.0」を集めたリンク・ページを作成している方もおられる。「バブル 2.0」や「味噌汁 2.0」など,今さらながらに「2.0」の“適用範囲”の広さに驚かされる。
読者がご存知の,あるいは考案されたジョークがあれば,コメント欄でお教えいただきたい。集まったらまたこのコーナーでご紹介させていただきたいと考えている。
誤解のないよう付け加えておくと,記者はWeb 2.0という言葉を単なる中身のない流行語だと考えているわけではない。言葉には力がある。Web 2.0を発案したティム・オライリー氏は,オープンソースという言葉の考案者のひとりでもある。オープンソース・ソフトウエアはそれまでフリー・ソフトウエアと呼ばれ,共産主義的な印象がつきまとっていたと言われる。オープンソース・ソフトウエアという言葉がなければ,現在のIT産業の形は違っていたものになっていたかもしれない。
そしてWeb 2.0という言葉が象徴する変化は,実際にいまとてつもないスケールで進行しつつあると記者は感じている。ここで紹介したジョークの作り手も,多くはそのことを否定しないのではいか。中にはこの変化をドライブする立場にいる人もいるのではないかという気もする。
だからこそ,ユーモアが必要なのだと,記者は考えている。他人からの借り物ではないオリジナルなアイデアを生み,育て,フロンティアを開拓する---健全な批判精神と,楽観主義こそが,そのための力強い手助けになるはずだ。