写真1 ICタグのアンテナ放射パターンのシミュレーション結果
経済産業省の報告書「平成16年度エネルギー使用合理化−電子タグシステム開発調査事業」(2005年8月発行、日立製作所)から引用。
 響プロジェクトの開発では、ICタグインレットのアンテナ設計が最も難しかったという。「1次と2次の試作品開発を通じて、ICタグのアンテナ設計に注力してきた。アンテナの出来不出来が、通信距離や同時読み取りの性能を大きく左右する」(日立製作所情報・通信グループIDソリューション事業部事業主幹の山下哲男氏)。

 アンテナはその形状や素子、パターン、インピーダンスなどを色々と変え、まずシミュレーションによって放射パターンを予測する。1次試作品を開発した際に実施したシミュレーションでは、写真1のような放射パターンが得られた。こうしたシミュレーションにより、アンテナの長さや幅などを決めていった。

 もっともシミュレーションで得られる結果と、実際のICタグが発揮する性能は必ずしも一致しない。このため1次、2次と試作品を開発してその性能を評価してきた。このほか、アンテナとICチップの接合方法なども工夫した。

 ICタグの付加機能についても検討を続けている。例えば出版業界などからは、万引き防止(EAS)機能に対して強い要望がある。店舗の出入り口などにゲート型アンテナを設置しておき、購入せずに持ち出されようとした商品が通過すると、アラームが鳴る仕組みである。

 このEAS機能の実現では、通信距離が長いというUHF帯の特徴が災いする。ICタグ付きの商品を持つ人がゲートの近くを通るだけでアラームが鳴る恐れがある。対策としては、ゲートを二重にする方法がある。ゲートの設置コストは上がるものの、二つのゲートを連続して通過したときにだけアラームを鳴らせば誤動作の可能性は低い。こうした対策についても検討を続けている。

 ICタグの形状についても、バリエーションを増やす方向で検討している。円形などさまざまな形状に要望がある。