写真1 朝日生命保険の本社

 朝日生命保険(朝日生命)は,2006年1月中旬に携帯電話を端末とした新しい「お客様情報管理システム」を導入した。端末を持ち歩いて使うのは,「サービスメイト」と呼ばれるスタッフ。顧客となる保険契約者への定期訪問を通じた保険販売のアフターサービスが主な業務で,全国に約830人が配置されている。実際の保険販売を行う社員の営業職員とは異なり,委託契約のスタッフである。

 お客様情報管理システムでは,アフターサービスで顧客を訪問する際に利用する顧客情報を,携帯電話に実装した専用アプリにダウンロードして使う。顧客の氏名や住所,保険契約内容などを閲覧できるシステムである。

システム化の第一目的は顧客情報の漏えい対策
紙ベースの顧客情報管理を携帯電話に置き換え

 サービスメイトは担当の地域が決まっていて,その地域に住む個人顧客に対して3カ月から半年に一度程度の頻度で自宅などを訪問し,情報紙の配布などのアフターサービスをする。サービスメイト1人が,500人程度の顧客を担当する。

 勤務形態は,9時~5時のような定時ではなく,夕方や休日など顧客に会えそうな時間帯をサービスメイト自身が考えて訪問する裁量制。とにかく顧客に会うことが仕事である。さらに週に1回,2時間ほど支社に出社し,管理担当社員に一週間に訪問した顧客に関する報告を行うとともに,次の週に訪問する予定の顧客に関するデータを受け取る。商品知識なども出社時に教育するという。

図1 携帯電話を使った「お客様情報管理システム」の狙い
セキュリティ確保と業務効率の向上を目指した。

 今回の「お客様情報管理システム」導入以前は,顧客情報を「カード」と呼ぶA4判の紙に記入していた。週1回の出社時に,その週に訪問する予定の顧客カードを選んで持ち出していたわけだ。カードのフォーマットは,2005年4月の個人情報保護法の完全施行をにらんで2004年12月に変更した。

 カードには顧客の氏名以外の住所や電話番号といった個人情報は記載せず,保険契約内容も項目名を符号に置き換えることで一目では内容が分からないようにしたのだ。とは言え,保険業に詳しい人が見ればある程度内容が想定できてしまう状況であり,個人情報保護の観点から抜本的な対策となる新システムの開発を進めた。

 お客様情報管理システムは,携帯電話を端末にすることで紙ベースの情報を持ち歩かずに済むようにすることが第一の目的である(図1)。さらに,訪問の状況を報告する業務をシステムに組み込むことで,業務効率の向上も狙った。

 新システムの開発は,2004年8月に着手した。保険を販売する営業職員には,以前からノート・パソコンを配布していた。一方,サービスメイトは原則として保険の販売はせずアフターサービスが主業務であり,保険内容のプレゼンテーションまで可能なノート・パソコンはオーバースペックと判断。サービスメイト用の端末としては,ノート・パソコンと比べて導入コストが安く,バッテリの持続時間や軽量さの面で優れている携帯電話やPDA(携帯情報端末)を検討した。2004年12月には,端末導入コストが低く抑えられる携帯電話を端末にすることに決め,携帯電話事業者として翌2005年5月に遠隔操作で端末内のデータを消去できるなどセキュリティ機能に力を入れていたKDDIを選定した。