2005年9月に開催された米Microsoftの開発者向けカンファレンス「Professional Developers Conference (PDC) 2005」の2日前に,筆者はMicrosoftが開発している「Windows Vista」の各製品種別に関する内部情報を独自に入手した。この資料に加えて最新の取材を基に,Windows Vistaの各製品種別に搭載される機能の違いを比較してみよう(訳注:本記事は,Windows IT Pro MagazineのPaul Thurrott氏が2005年9月に初版を執筆し,2006年3月に情報を更新したものです)。

 Windows Vistaには,大きく分けて「家庭向け」「企業向け」という2つの製品カテゴリが存在する。この構成は,現行のWindows XPとほぼ同じである。家庭向けのWindows XPとは,「Home Edition」「Starter」「Media Center Edition」の3製品であり,企業向けWindows XPとは「Professional」「Professional x64」「Tablet PC Edition」の3製品である。Windows Vistaでは,家庭向けは「Home」,企業向けは「Business」と呼称される。

 家庭向けWindows Vistaは,「Windows Starter 2007」,「Windows Vista Home Basic」(およびヨーロッパ市場向けの「Home Basic N」),「Windows Vista Home Premium」,「Windows Vista Ultimate」の4種類である。

 企業向けWindows Vistaは,「Windows Vista Business」(ヨーロッパ市場向けの「Business N」)と「Windows Vista Enterprise」の2種類である。

 このように,Windows Vistaには6種類の製品が予定されている。各製品の詳細について,説明していこう。なお最終ページには,各バージョンごとに搭載される機能を比較した一覧表を掲載したのでご覧頂きたい(一覧表はこちら)。

Windows Starter 2007

 低価格PCの購買層である新興成長市場でのみ販売される,初心者ユーザー向けの製品。Windows XPと同様に,Windows Starter 2007(「Windows Vista」ブランドが付かない点に注意)は「Vista Home Basic」のサブセットであり,32ビット版のみが出荷される(64ビットのx64版は用意されない)。

 Starter 2007では,同時に実行可能なアプリケーション(ウインドウ)が最大3つに制限されている。またインターネットには接続できるが,ほかのPCからのネットワーク接続は受け付けない。ログオン・パスワードは不要であり,「ユーザーの簡易切り替え機能」も提供されない。Starter 2007はWindows XPの「Starter Edition」相当の製品である。

 Windows Starter 2007には,Vistaのほかのバージョンが提供する独自の機能の多くが省かれている。例えば 「Aero」ユーザー・インターフェースは用意されていないし,Microsoftが計画している新しい「ドメイン」に似たホーム・ネットワーキング機能にも対応しない。ほかにもDVDのオーサリング機能,一般的なゲーム・コントローラのサポート,そして従来よりも強化された画像修正機能を持つ画像編集ソフトなどが省かれている。

Windows Vista Home Basic

 家庭におけるスタンドアロン用途向けのWindows Vista。Windows Vistaの基準となるバージョンであり,ほかのすべてのバージョンはこのバージョンをベースに構築される。Windowsファイアウオール,Windowsセキュリティ・センター,セキュアなワイヤレス・ネットワーク機能,ペアレンタル・コントロール(親が子供のパソコン利用を制限する機能),アンチスパム/アンチウイルス/アンチスパイウエア機能,ネットワーク・マップ,Windowsサーチ,Movie Maker,Photo Library,Windows Media Player,RSSをサポートするOutlook Expressなどが実装される予定である。

 Windows Vista Home Basicは,「Windows XP Home Edition」に相当するものと考えてよいだろう。このバージョンは一般的な消費者,Windows 9x/XP Starter Editionからのアップグレード・ユーザー,価格に敏感な消費者,1台目のPCの購入者をターゲットにしている。Starter 2007と同様,Vista Home Basicも新しい「Aero」ユーザー・インターフェースを備えていない。

Windows Vista Home Premium

 家庭でのエンターテインメント,および家や出先で要求されるパーソナル・コンピューティングのすべてに対応可能なエディション。Windows Vista Home Premiumは「Home Basic」のスーパーセットであり,「Home Basic」,「Media Center」や「Media Center Extender」の機能を併せ持っている。

 DVDビデオのオーサリング,HDTV(高精細テレビ)のサポート,タブレットPCの機能,Mobility Centerおよびその他のモビリティ/プレゼンテーション機能,補助ディスプレイのサポート,P2Pアドホック・ミーティング機能,無線LANの自動設定およびローミング機能,複数のPCで有効な統合ペアレンタル・コントロール,ネットワーク上の共有フォルダへのバックアップ機能,インターネット経由のファイル共有,オフライン・フォルダ,複数のPC間のデータ同期,Sync Managers(携帯機器との同期機能),および家庭向けのWindows Server 2003 R2ベースのサーバー製品である「Quattro Home Server」のサポートが機能として実装される。

 Windows Vista Home Premiumは「Windows XP Media Center Edition」に対応する製品であるが,含まれる特徴および機能ははるかに多く,またタブレットPCもサポートしている。私はWindows Vistaの製品種別の中ではこれが最も売れるのではないかと予想している(現在最も売れているのはWindows XP Professionalである )。このバージョンはPCマニア,自宅で複数のPCを使用するユーザー,子供のいる家庭,そしてノートPCのユーザーをターゲットにしたものである。