図9 具体的な事例やエピソードを盛り込む
図9 具体的な事例やエピソードを盛り込む
[画像のクリックで拡大表示]

 レベル3では,「文章の価値を高める」ためのチェックポイントをまとめた。読み手の興味を引きつけるような表現にしたり,信ぴょう性や説得力を高めるデータや事例などを盛り込んだりすることだ。これまでに挙げたチェックポイントとは違って単純に修正できるものばかりではないが,ぜひ実践して欲しい。

途中で疑問形の文章を入れる

 まず途中で疑問形の文章を入れて,読み手の興味を引きつけるという表現方法がある(チェックポイント(17))。

 ビジネス文書のように,何かを説明する文章では,どうしても表現が単調になりがちだ。「次に○○について述べる」のような繰り返しでは,読み手が途中で飽きてしまう。

 そんなとき,疑問形の文章をはさみ込むという手が有効である。典型的なのは,問題点や課題を挙げた上で「では,どうしたらよいだろうか」や「原因は一体なんだろうか」のようにつなげることだ。「次に解決策を述べる」や「原因を挙げる」と書くよりも,メリハリが出て,読み手の興味を引きつけられる。これは講演者が聴衆に質問して,興味を引きつけるのと似たやり方である。

 ほかにも「こんな疑問が沸いてこないだろうか」や,「ここできっとこう思うはずだ」のように,読み手の思考を誘導するような書き方も効果的だ。

具体的に解説する

 説明の具体性を高めるためには,できるだけ事例やエピソードなどを盛り込むようにしよう(チェックポイント(18))。ITを使ったマネジメント手法やソリューションなど,ITエンジニアが文章を使って説明する事柄の多くは,人によって解釈が異なる抽象的な内容であることが多い。それだけに,できる限り具体的な説明を加えることが重要だ。

 CRMシステムを説明する場合を例にとってみよう。単に「顧客情報を収集して管理し,最適な対応を実現する」と書くのでは,読み手が具体的なイメージをつかめない。そこで「小学生の子供を持つ顧客に絞り込んで,学資保険のダイレクトメールを送れる」のように事例を挙げて説明するとよい(図9[拡大表示])。

 具体性が必要なのは,主張の論拠を示すときも同じ。論拠の裏付けとなる具体的な材料を示すことが肝要である。できるだけ数字やデータを盛り込んで,説得力や信ぴょう性を高めて欲しい(チェックポイント(19))。

 SCMシステムの導入効果を示すには,「市場動向への迅速な対応」や「大幅な在庫削減」のように抽象的な表現では不十分である。「週次での生産計画の見直し」,「平均在庫量を20%削減」のように,できる限り具体的に表現することで説得力が高まる。

 また単なる事実の羅列にとどめず,意義や理由を説明することも重要だ(チェックポイント(20))。例えば製品を説明する文章を書く場合,単に機能を羅列するだけでは不十分である。「その機能をどう実現しているのか」という仕組みを少しでも盛り込むと,読み手にとって理解しやすくなるし,印象にも残りやすくなるはずだ。

(中山 秀夫=日経SYSTEMS)