「5円のICタグ『響タグ』は、すでに目標の80%程度の性能を達成している」——。2006年2月2日に開催された「NET&COM 2006」のトレンドセッション「UHF帯無線ICタグ---本格導入の第2ステージへ」(主催:日経RFIDテクノロジ)において、経済産業省の委託を受けて響タグの開発を進める日立製作所情報・通信グループIDソリューション事業部事業主幹の山下哲男氏は、響プロジェクトついてこう語り始めた。同セッションの講演から、響タグの最新状況を3回にわたって報告する。

写真1 響タグの2次試作品
サイズは154×13mmである。

 響プロジェクトは2004年8月に始まり、2006年7月に終了する2年間のプロジェクトである。すでにその4分の3を消化したが、山下氏によれば、スケジュール通りに順調に進んでいるという。目標性能の80%を既に達成しており、残りの半年間で完成を目指す。

 響タグは、2005年8~10月ごろに1次試作品を完成させ、その評価結果を反映させた2次試作品が、このほどできあがった(写真1)。これを2006年2~3月に続々と実施される経産省や農林水産省などの実証実験で利用してもらう。例えば経産省の実験では、出版業界や自衛隊、小売りの店舗などで使ってもらい、実験室では分からない評価結果を得る計画である。現在は、響プロジェクトにおける最終試作品となる3次試作品の開発に入っているが、実証実験での評価結果を反映させて、完成を目指す。

 1次と2次の試作品は、長さ15cm程度のダイポール型と言われるものである。響プロジェクトでは、長さ10cm程度の響タグも開発する予定で、実導入ではこちらが主流になると見ている。10cmインレットの開発もすでに開始しており、今後はこちらを中心に開発を進めていく。

 響プロジェクトで開発するものを整理すると3種類あり、ICタグ用ICチップと、5円で販売できるICタグインレット、リーダー/ライター用ICチップである。それぞれの性能は次のようになる。ICタグ/ICチップは、860M~960MHzという帯域をカバーする。日本のUHF帯ICタグは、952M~955MHzを使うが、欧州は865M~868MHz、米国は902M~928MHzなど、国によってUHF帯ICタグに割り当てられている周波数帯は異なる。響タグは、どの国でも、同じ機能と性能を発揮できるようにする。

 響タグのメモリー容量は512ビット以上で、読み書き可能とする。固有IDの読み取り速度は10ms/個である。読み取り距離は3m以上、書き込み距離は1m以上を目指す。リーダー/ライターはICチップの開発が主体であり、ほかのリーダー/ライターメーカーにさまざまな形態の製品を開発してもらうことを主眼にしている。ただし主にICタグの性能評価のために、実際に使えるリーダー/ライターも評価用として開発する。