若手部員 宇田くん |
客先で間違ってハブの電源ケーブルを抜いてしまったんだ。すると,お客さんのパソコンのうち何台かがエラーを表示したんだけど,エラーが出なかったパソコンもあったんだよ。 | ||
若手部員 貴子さん |
よく確かめないで,電源ケーブルを抜いたんでしょう。むちゃは実験室だけにしてよね。でも,エラーの出方が違うのは納得できないわ。再現して確かめてみましょう。 |
前回(第11回)はLANケーブルの違いと,パソコン同士やハブ同士のつなぎ方を調べた。今回は,稼働中のパソコンがつながっているハブやLANスイッチの電源を切ってしまうとどうなるか,という実験だ。パソコンによってエラーの出方が違う点などを確認していこう。
貴子:電源を抜いてしまったときの状況をもっと詳しく説明してよ。そうじゃないと,再現できないわ。
宇田:3台のハブがあって,1台のハブの配下に残り2台がつながる構成だったよ。そして,それぞれのハブのポートからパソコンにつながるケーブルが延びていたんだ。構成図を描くと,こんな感じだよ(図1)。
エラーの出方が3種類に分かれた
貴子:それで,どのハブの電源ケーブルを抜いてしまったの。宇田:大もとのハブさ。
貴子:あきれた。それじゃあ,お客様のLANはまったく使えなくなったんじゃないの?
宇田:それが,そうでもないんだ。不思議なことに,パソコンによってエラーの出方が違っていたんだ。
貴子:どんな具合だったの。
宇田:ハブの電源を切った直後に,Windowsマシンの画面右下に「ネットワークケーブルが接続されていません」と表示されたり,まったくエラーが表示されなかったりしたんだよ。あと,サーバーからファイルをコピーしているWindowsマシンは,しばらくしてから「XXをコピーできません。指定されたネットワーク名は使用できません」とエラー表示がポップアップしていたな。
貴子:要するにエラーの出方は3種類に分かれたということね。じゃあ,再現してみましょう。
実験環境を確認しておこう。3台のリピータ・ハブを図2のようにつなぎ,それぞれのハブにパソコンを1台ずつ接続した。PC1とPC2は,つながっているだけで操作は何もしていない状態,PC3はファイル・サーバーから大きなファイルをダウンロードしている状態にした。この状態で大もとのハブの電源ケーブルを抜くと,各パソコンにどんなエラーが表示されるかを調べた。
結果は図2の下の通り。PC1はハブの電源を落としてもエラー表示はなかった。PC2は電源を落としてすぐに,「ネットワーク ケーブルが接続されていません」というエラーが画面右下に表示された。PC3は,ハブの電源を落としてしばらくしてから(数十秒後),「XXをコピーできません。指定されたネットワーク名は使用できません」とエラー表示がポップアップした。
途中のハブのダウンは検知できない
貴子:実験結果を見ていきましょう。宇田:電源を落とした大もとのハブに直接つながっているPC2は,直後にエラーが表示されたね。
貴子:でもエラー表示は「ネットワーク ケーブルが接続されていません」と出ているわよ。パソコンにLANケーブルはきちんとつながっているのに・・・。
宇田:前回のテストでもそうだったけど,きちんと通信できる状態になっていないと,このエラーが表示されるんだと思うよ。ハブの電源を切ると通信できなくなるから,エラーがすぐに表示されたんだ。
貴子:そっか。そう考えれば,電源を落としたハブと直接つながっていないPC1がエラーを出さなかったのも納得できるわ。
宇田:どういうこと?
貴子:つまり,PC1は直接つながっているハブとは通信できる状態のままだったからよ。
宇田:なるほど。でもファイル転送中のPC3は,どうしてしばらくしてからエラーが表示されたんだろうか。
貴子:そうね。エラー・メッセージもPC1のものとは異なるし,よくわからないわ。
転送中だとしばらくしてからエラー
PC1とPC2に対する2人の推理は正解である。では,PC3についてはどうだろうか。PC3は電源を切ったハブの先にあるWindowsマシンの共有ファイルをダウンロードしている最中だった。このときの現象を理解するには,LANの知識だけでなく,Windowsのファイル共有機能やTCPというプロトコルの知識も必要になる。ここで,簡単に確認しておこう。
Windowsのファイル共有機能はTCPを使い,相手からデータがうまく届かなかったときは,再送要求を送る。この再送要求は何度か繰り返される。それでもファイル・サーバーからデータが届かないと,PC3は途中の経路かファイル・サーバーに障害が起こったと判断してエラーを出す。このため,すぐにはエラーが表示されず,ハブがダウンしてから数十秒後にエラーが出たのである。
また,エラー表示が「指定されたネットワーク名は使用できません」とポップアップしたのは,通信相手であるファイル・サーバーの共有フォルダにアクセスできなくなったということを表している。