Q:古いパソコンを捨てようと思います。ハードディスクのデータを完全に消すにはどうしたらよいでしょうか。また,OSだけを残してデータを抹消することはできますか。


A:ハードディスクに保存された情報は,フォーマットしただけでは消えません。専用のデータ消去ソフトが必要になります。


 古いパソコンを廃棄したり,リースしたパソコンを返却したりする場合には,ハードディスクに保存されたデータをすべて削除しておく必要があります。「重要なデータは保存されていないから大丈夫だ」という人もありますが,どこでどのようにデータが悪用されるかもしれません。とにかく,すべてのデータを削除し,まっさらの状態にしておかなくてはいけません。

 また,異動によってパソコンの使用者が代わる場合には,OSは残したままにしてデータだけを完全に抹消する必要があります。


ハードディスクはフォーマットしただけではダメ


 ファイルをごみ箱に捨てておしまいというのは最悪です。ごみ箱の中のファイルは,すぐに元に戻すことができるからです。

 では,ごみ箱の中身を空にすればいいかというと,それでもまだまだ不十分です。ファイルを削除したといっても,そのファイルを読み出せなくしただけであって,特殊なソフトを使うと簡単に読みとることができます。

 それでは,ハードディスクをフォーマットすればどうでしょうか。[マイコンピュータ]のアイコンを右クリックして[フォーマット]を実行すると,ハードディスクが空になって初期の状態に戻るといわれています。しかし,それでもまだ一部のソフトを使うと,ある程度読み取ることが可能なのです。DOSコマンドのfdisk(領域確保のコマンド)を使った場合も,やはり同様です。


データ抹消用のソフトを使う


 ハードディスクは,ガラスや金属の表面に磁性体を塗ったもので,磁化の方向を変化させることによってデータを書き込み,またその磁化の方向を調べてデータを読み取ります。実は,ファイルを削除してもこの磁化の方向が変わるわけではなく,ファイルのアドレスを指定したインデックス情報だけが消えるのです。このため,上書きなどされずに磁化の方向が残っていれば,特殊なソフトによってその部分のデータが読み出せてしまうというわけです。

 場合によっては,すでに何カ月も前に削除したはずのファイルの一部が読み出されることもあるので注意が必要です。

 このようなことを防ぐために,市販のデータ抹消ソフトは,特定のデータでハードディスクを上書きするといった方法をとっています。それによって,磁化の方向を一定にして読み取りをできなくしてしまうのです。

 さらに一歩進めて,ランダムなデータで何度も上書きすることによって,完全にでたらめにして読み取りを不可能にするといった機能をもつソフトもあります。もっとも,ここまで徹底するとかなりの時間が必要ですので,実行前に確認してください。

 OSも含めてハードディスクのデータをすべて抹消するソフトは,AOSテクノロジー の「ターミネータ3.0 データ完全抹消」,ジャングル の「完全 ハードディスク抹消」など,数多くの製品が市販されています。この種のソフトは,CD-ROMやフロッピーディスクから起動できる機能がついているのが一般的です。

 また,OSを残したままで,ファイル単位,フォルダ単位,ドライブ単位でデータを抹消するソフトとしては,AOSテクノロジーの「ターミネータ アルティメット」,ジャングルの「完全 ファイル抹消」などがあります。

 ソースネクスト の「Acronis DriveCleanser Personal」は,ハードディスクのまるごと抹消と,ファイルやフォルダ単位での抹消の両方に対応しています。

 なお,ハードディスク抹消ソフトを購入する場合には,対応するハードディスクに注意してください。IDE接続の内蔵ハードディスクはどのソフトにも対応していますが,USBやSCSI,IEEE1394などで接続するハードディスクには,ソフトによっては対応していないことがあります。