最初に,前回の内容について一部訂正させていただきます。前回の記事中に「フィラメントにも色つきのものがありますが」という記述がありますが,「フィラメント・タイプの豆電球にも色つきのものがありますが」に訂正させていただきます。あたかもフィラメントそのものに色が付いているかのような表現で誤解を与えてしまい,申し訳ありません。色つきの豆電球はガラスに色が付いています。指摘してくださった読者の方,ありがとうございました。

 さて今回は,最近よく見かける自転車用の点滅ライトを作ります。ライトのきょう体には100円ショップで売っているものを流用します(図1)。この自転車用ライトは豆電球を使ったタイプですが,この電球をLEDに交換し,点滅回路を組み込みます。自転車用ライトには単3乾電池が4本入りますので,電源電圧は6Vになります。白色LEDのVF(順方向電圧)は約3.6Vですので,単3乾電池3本(4.5V)でも光らせそうです。電池3本ならば,点滅回路を入れるスペースも確保できます。


図1●100円ショップで売られている自転車用ライト

 まずは点滅回路から検討しましょう。LEDを点滅させるには「無安定バイブレータ回路」を利用します。トランジスタを使う回路や,タイマーICを使う回路など,様々な種類がありますが,ここではトランジスタを2個使う回路を構成します(図2)。回路図の作成には「回路図エディタBSch3V」を使用しました。水魚堂のWebサイトからダウンロードできます。


図2●無安定バイブレータ回路
トランジスタを2個,コンデンサを2個,抵抗を4個使う。回路図の作成には「回路図エディタBSch3V」を使用した。水魚堂のWebサイトからダウンロードできる。

ブレッドボードで動作を確認

 実際に基板にパーツを組む前に,「ブレッドボード」で動作を確認しましょう。ブレッドボードとは,回路を試すための基板で,特に「ソルダーレス・ブレッドボード」はハンダ付けが不要で自由にパーツを付けたり外したりできるので便利です(図3)。


図3●回路の動作を簡単に試せるブレッドボード
様々な大きさのものがあり,小さいものは1000円程度で購入できる。

 図4は,図2の回路をブレッドボード上に組んだものです。抵抗(R1~R4)の値とコンデンサ(C1,C2)の容量によって,点滅の周期が変わります。ただその計算方法が分からなかったので,今回はいくつかの組み合わせを試して値を決めました(図5)。抵抗値とコンデンサの容量は,最終的にR1=100Ω,R2=10kΩ,R3=10kΩ,R4=100Ω,C1=C2=22μFとしました。


図4●ブレッドボード上にパーツを並べて回路を組んだ

図5a
図5b
図5c
図5●抵抗値とコンデンサの容量の組み合わせを換えると,点滅周期が変わる。
(a)R1=100Ω,R2=4.7kΩ,R3=4.7kΩ,R4=100Ω,C1=C2=22μF。(b)R1=100Ω,R2=10kΩ,R3=10kΩ,R4=100Ω,C1=C2=22μF。(c)R1=100Ω,R2=47kΩ,R3=47kΩ,R4=100Ω,C1=C2=22μF。

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ユニバーサル基板を使って配線する

 ブレッドボードでの動作が確認できたので,いよいよ基板に組み込みます。配線パターンを書いて専用の基板を作る方法もありますが,ここでは「ユニバーサル基板」を使いました。ユニバーサル基板にはいろいろな大きさのものがありますが,ここで作る回路は小さいので,ユニバーサル基板を切って使いました。

 なお,ユニバーサル基板には,材質によって「紙エポキシ」と「ガラス・エポキシ」の2種類があります。紙エポキシは安いのですが,強度が弱いです。切って使うには切りやすいですが,切れてほしくないところまで欠けてしまうこともあります。これに対してガラス・エポキシは,強度が強いので切るには多少苦労しますが,少々力をかけても欠けることはありません。

 図6はユニバーサル基板に,必要なパーツを取り付けたところです。あとはパターン面で,パーツ同士を回路図通りに接続し,ハンダ付けします。ハンダごてには,ワット数やこて先の大きさによって,いろいろな種類がありますが,20W~30Wのものがよいでしょう。


図6●ユニバーサル基板上にパーツを並べて回路を組んだ
ユニバーサル基板は小さく切って使った。使用したのは紙エポキシのユニバーサル基板。

 また,ハンダにもその太さなどいろいろな種類がありますが,直径が0.6mm~0.8mmのものが使いやすいと思います。ショップには,電子工作向けのハンダごてやハンダがセットになった製品もあります(図7)。


図7●電子工作向けのハンダごてセット

 ユニバーサル基板はピッチが小さいので,ハンダ付けは難しいかもしれませんが,つないではいけない部分はショートさせないよう,またつながなければならないところは確実に接続するようにしましょう。

 点滅回路のほかにLEDも,別のユニバーサル基板上に実装します。せっかく自作するので今回は,白色だけの市販品とはちょっと違った色にしようと思います。白色LEDを2個と青色LEDを1個の,合計3個を使いました。電源電圧が4.5Vですので,3個を並列につなぎます。図8が,LEDをユニバーサル基板に取り付けたところです。このLEDと,点滅回路をリード線でつなぎます(図9)。


図8●ユニバーサル基板上に3つのLEDを並列接続で配置した
上1個が青,下2個が白。白色LEDをレンズ側から見ると黄色の蛍光体が見えるので,ほかの色のLEDと区別できる。

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図9●LEDを固定した基板と点滅回路を組んだ基板をリード線で接続する
写真はパターン面から見たところ。

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きょう体に組み込む

 回路が作れたら,きょう体に組み込みます。まず,自転車用ライトを分解します(図10)。そして,不要な電極を外します(図11)。電池3本が直列に接続されるように,点滅回路とリード線で接続します(図12)。豆電球の代わりにLEDを差し込みます。あとはきょう体を元通りに組み直せば完成です(図13)。点滅回路が小さかったので,結局電池を3本仕様にしなくても回路を組み込むスペースがありました。


図10●自転車用ライトを分解する
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図11●電池3本仕様になるよう不要な電極を外す
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図12●点滅回路の基板と電極をリード線で接続する
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図13●完成した自転車用LED点滅ライト
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 部品代は,合計で約500円でした。内訳は以下の通りです(部品の単価は購入店や購入数によって変わります)。

・ライト本体 105円
・LED3本 150円
・電解コンデンサ2個 100円
・抵抗4本 40円
・トランジスタ(2SC1815)2個 100円
・リード線 少々