今やビジネス・シーンにおいて電子メール,ブラウザに次ぐ「ビジネスツール」となったグループウエア。ある程度の規模の会社であれば,社員のスケジュールやToDo,プロジェクトの情報などを共有し,コミュニケーションの円滑化をはかる企業内「インフラ」として定着している。しかし,市販製品はコストがそこそこ高くついてしまうため,導入を考えているものの実際には導入していないという中堅・中小企業も多い。今回はそうしたグループウエアを導入する前に,Googleの無料サービス「Googleグループ」を使って,社員同士で情報を共有するやり方を解説しよう。

無制限の保存容量をバックアップに利用する

 Googleグループは,いわゆる市販されているグループウエアとは違う。ひとことで言えば,Googleが提供する無料メーリングリスト・サービス(特定のメール・アドレスにメールを送信すると,登録されているメンバーにそのメールが転送され,電子メールを使って複数の人間で議論できるサービス)である。

 こうしたメーリングリスト・サービスはGoogleだけでなく,Yahoo!やinfoseekなどのポータルサイトも提供しているが,Googleグループはそれらにはない特徴を持っている。それは投稿されるメールの「保存容量」に上限が無いということだ。つまり,作ったグループ(メーリングリスト)を,社員同士のコミュニケーション目的で利用できるのはもちろん,仕事で必要な書類ファイルなどをグループに添付ファイル形式で「投稿」することで,オンライン上に保存(バックアップ)・共有しておくことができるのだ。そこがGoogleグループのもっとも優れている点と言えるだろう。

 投稿されたメールは参加メンバーにメールとして配信されるが,Googleグループのページにログインすれば,投稿されたすべてのメールのアーカイブをWebで確認することができる。大量に投稿されるメーリングリストの場合,過去の情報を探すのに苦労することがある。Googleグループには強力な検索機能が備わっているので,少ないキーワードを手がかりに目的の投稿を探すことができる。

 メーリングリストは設定を変更すれば,登録メンバーへの通知専用(メールマガジンや社内報として利用する)でも利用可能。クローズドな社内用のメーリングリストだけでなく,メッセージのやり取りを社外に公開すれば,自社製品のサポート用電子会議室を作ることもできる。グループはいくつでも無料で作れるので,社内用メーリングリストだけでなく,部署ごと,プロジェクトごとなど目的別に作って,社員同士のスケジュール管理や情報共有に利用するといいだろう。

 もちろん,本格的なグループウエアと比べると,機能的にはいろいろな点で見劣りする。それでも,メーリングリスト・サービスさえあれば,それだけで社内の情報共有やコミュニケーションが成立するケースも多い。グループウエアに興味がある経営者は,まずこのGoogleグループを使って社内の情報共有を効率化させた上で,メーリングリストだけでは機能的に不満があるという場合に,はじめて市販のグループウエアの導入を検討するとよいのではないだろうか。

 なお,Googleグループには「ニュースグループ」という,テキスト・ベースの電子掲示板システムに投稿された記事を検索する機能も付いている。ニュースグループは1990年代以前から存在した文化である。現在のインターネットを支えるWebが普及する以前の1980年代末や1990年代初頭に「リアルタイム」で投稿された記事は,Googleで検索してもなかなか見つけられない。「ニュースグループ」では,テキスト・ベースで投稿されたそれらの情報を探すことができる。

 ニュースグループには,大学や企業の研究者が多く参加しているのも特徴だ。実名で投稿する人も多いため,ある程度信頼性の置ける情報が見つかることも少なくない。技術系の話題などを調べるときなどは,通常のGoogleで検索するだけでなく,Googleグループを使ってニュースグループも調べるようにすれば,目的の情報が見つかることもあるだろう。

■津田 大介 (つだ だいすけ)

【略歴】
1973年東京都生まれ。週刊誌,インターネット誌,ビジネス誌,音楽誌などを中心に幅広いジャンルで執筆。ここ数年はネットカルチャーやネットワーク時代の音楽の在り方について多くの原稿を寄稿。主な著書は,目的別にGoogleの活用法を解説した『ググる』,ネット通販サイト「Amazon」の活用法を解説した『アマゾる』(両書とも毎日コミュニケーションズ刊)など。

【関連URL】
音楽配信を中心としたデジタルコンテンツ流通,著作権問題などの関連ニュースを集めた情報サイト「音楽配信メモ」(http://xtc.bz/)も運営している。