電子マネーに代表される少額決済サービスが離陸期を迎えた。商機は、決済システムの再構築に加え、新たな販促手段を実現する顧客管理システムを提案できることにある。



 2006年は“新旧”の少額決済サービスが、ソリューションプロバイダにも新たな需要を生み出しそうだ。既存の電子マネーの普及が立ち上がる一方、2007年春までには新たな少額決済サービスも出そろう。このため、少額決済サービスを導入するユーザー企業がシステム対応に着手すると同時に、サービスの運営業者も基幹業務システムの構築を急ぐからだ。

 既存のサービスで、先頭を走るのはビットワレットの「Edy」。開始から丸4年を経て、カードの発行枚数が1540万枚、対応店舗が2万7000店に到達した。これを追う東日本旅客鉄道(JR東日本)の「Suica」や西日本旅客鉄道(JR西日本)の「ICOCA」、そしてクレジットによる少額決済サービス「QUICPay」なども合わせると、少額決済サービスの総会員数は3000万人に迫る。利用件数もEdyとSuicaの2大陣営で月間合計1700万件(昨年12月時点)と、前年比2倍以上に伸びた。EdyやSuicaの機能を携帯電話機に搭載できる「モバイルFeliCa」も対応端末が1000万台を超え、少額決済サービスの普及を後押ししている。

 そこに来春から新サービスを投入するのが、関東のバス・私鉄事業者などで設立したパスモと、セブン&アイ・ホールディングスである。ICカード型乗車券に電子マネー機能を搭載するパスモは、当初からJR東日本との相互運用を可能にし、電子マネーの普及でも協力体制を取る方針。電子マネーも備えたICカード型乗車券は関東・関西圏で出そろい、今後は他の地域への拡大がテーマになる。独自方式を採用したセブン&アイは、「グループの全店舗1万2500店では毎日1300万人の利用者がある。初年度で1000万人の会員獲得は十分に可能」と自信を見せる。

商談はこれからが本番

 ソリューションプロバイダにとって、電子マネーなどで生まれる1つ目のソリューション需要は、新サービスの運用業者が構築する決済システムの再構築である。パスモ、セブン&アイともにシステム商談はこれからが本番。実績のあるNTTデータやJR東日本情報システムのほか、セブン&アイの商談には取引のある野村総合研究所(NRI)、NECなどもアプローチするとみられる。ただし高信頼性が必要な大規模システムだけに、手掛けられるシステムインテグレータは限定される。

 2つ目に期待できる需要が、新サービスを導入するユーザー企業である流通・サービス向けのソリューションだ。電子マネーなど新サービスを採用するユーザー企業の狙いの1つは、販促やマーケティングにある。このため電子マネーなどの新サービスの導入を突破口に、会員サービスや購買行動を分析する新しいCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の活用を提案できるようになる。

 例えば、ビットワレットが力を入れるのが、ハウス(会員)カードにも利用できるEdyカード。既にサークルKサンクスなどの流通企業が採用し、割引などの特典を提供するポイントサービスに活用している。狙いは会員の囲い込み策に加え、精度の高いマーケティング情報の収集に活用することだ。

 セブン&アイが独自の電子マネーを発行する狙いの1つも、ハウスカードを用いたマーケティング支援にある。カードは住所や年齢などの会員登録を前提に発行する予定で、従来の電子マネーではできなかった個人属性も加味した購買行動の分析が可能になる。加えて、グループ企業間でのポイント連携サービスなど、顧客の囲い込み策にもつながる。