昨年後半から、銀行のATMに盗撮カメラが相次いで仕掛けられた。盗み取った情報から偽造キャッシュカードが作成され、預金が引き出される被害も発生した。このため金融機関では盗撮を防止するソリューションへのニーズが高まっており、対策製品も相次いで登場している。



 「金融機関からの引き合いが圧倒的に多い。単なる勉強ではなく、かなり前向きに検討している」。盗撮検知機能を新たに追加したセキュリティ管理システム新商品「Webvisor III)」を今年1月に発売した日立電子サービス(横浜市、百瀬次生社長)の原川竹氏理事サービス事業本部副本部長は、手応えをこう語る。

 最近、金融機関の間で盗撮防止ソリューションに対する関心がにわかに高まっている。昨年後半から今年にかけて、ATM(現金自動預け払い機)盗撮による偽造キャッシュカード不正使用事件が相次いでいるからだ。

ATMでのカード利用が狙われる

 今年1月、横浜銀行は神奈川県平塚市内の出張所ATMコーナーに盗撮カメラが仕掛けられ、偽造キャッシュカードによる不正な引き出しがあったことを発表した。昨年12月には、東京都内のコンビニエンスストアに設置されているATMで、旧UFJ銀行の愛知県内にある支店の顧客の偽造キャッシュカードの使用が判明。この時被害に遭った顧客のキャッシュカードが盗撮されたとみられることも明らかになった。

 昨年初めには、キャッシュカードの磁気ストライプの情報を不正に読み取る「スキミング」による偽造キャッシュカード事件が社会問題化した。銀行は静脈認証やICキャッシュカード採用など対策の手を打ってきた。今回新たに犯罪の標的にされたのが、ATMでキャッシュカードを使う現場だ。

 金融機関は盗撮被害を未然防止するために、ATMへの巡回に力を入れている。しかし巡回した時に盗撮カメラが発見されなくても、警備員がいないすきを見て仕掛けられる恐れもある。

無線盗撮カメラを常時監視

 そこで注目を集めているのが、盗撮カメラを常時監視するソリューションだ。これは盗撮カメラから発信される不審電波を検知して、監視センターに警告を伝える仕組み。りそな銀行と埼玉りそな銀行では今年1月から、地方でも山陰合同銀行(島根県松江市)が昨年12月末から盗撮監視ソリューションを導入し始めている。

 日立電子サービスのWebvisor III)は、従来の画像監視、ラック監視、入退室監視に加えて、無線盗撮カメラを自動的に検知する新機能を備えている。ATMコーナーに設置された盗撮検知装置が盗撮カメラの電波を検知すると、監視センターに、警告と同時に盗撮された画像を傍受して送信する。監視センターで警告と画像を確認した後、速やかにATMコーナー内の盗撮カメラを撤去する。

 検知装置は、独自に開発した複数の検知機能を組み合わせたもの。不審電波は半径約5メートルの範囲で検知することができる。価格は、100カ所対応で監視センター用システムが120万円から、盗撮検知装置や画像蓄積装置などの一式が1店舗当たり60万円からとなっている。

 プログレッシブ・システムズ(東京都中央区、佐野充社長)も、盗撮カメラや盗聴器を自動検知する「Space Securityシステム(SS-700)」を開発し、この1月から販売を開始した。盗撮カメラの電波を半径10メートル以内であれば検知でき、管制サーバー1台に最大50台を接続することができる。

 SS-700は、まず設置場所の通常時の電波環境を自動的にデータベースに登録。これによって、通常時と盗撮カメラが設置された異常時を判別する。携帯電話などからの電波は通常時の電波として判断し、無線盗撮カメラの電波を検知すると異常時の電波として管制サーバー側に通報する。新種のカメラに対応する最新バージョンの自動アップグレード機能もある。

 価格はレンタル方式で、1台当たり月額2万円から5万円(管制サーバーのソフト利用料金を含む)。今後3年間で10億円の販売を目標にしており、「ATMをサポートするベンダーや監視システムを構築するソリューションプロバイダと協力したい」(佐野社長)と、パートナーによる販売を積極的に展開する方針だ。