ここまで見てきたように,公衆無線LANサービスのしくみは事業者によって異なる。そのため,アクセス・ポイントは事業者ごとに設置するのが基本だ。
ただ,駅や空港など複数のサービスが参入するエリアは,事業者ごとに設備を置くと,その分設置場所や無線LANの電波が必要になり,効率が悪い。そこで,複数の事業者が,特別な機能を持つアクセス・ポイントを使って,1台のアクセス・ポイントの一つのチャネルを共用するケースが出てきている。
一般的なアクセス・ポイントは,一つのチャネルに一つのESS-IDしか設定できない(図1-5)。複数サービスを同じエリアで運用するには,サービスごとに異なるチャネルを割り当てる。
チャネルにESS-IDを設定すると,アクセス・ポイントはそのチャネルでビーコンと呼ばれるパケットを定期的に発信する。ビーコンにはチャネルに設定したESS-IDの情報が含まれている。ユーザーのパソコンは,このビーコンをキャッチすることで,ESS-IDがわからなくても公衆無線LANサービスのアクセス・ポイントを検出できる。
これに対し,複数のサービスが共用するアクセス・ポイントは,一つのチャネルに複数のESS-IDを設定している。また,ESS-IDを設定しても,アクセス・ポイントが定期的に出すビーコンにはESS-IDが含まれていない。
アクセス・ポイントを見つけて接続するには,あらかじめパソコンにESS-IDとWEPキーを指定してから検索する。すると,アクセス・ポイントがパソコンの呼びかけに応える形で対応するESS-IDを入れたビーコンを返す。こうして,ユーザーは自分が使うアクセス・ポイントを検出し,通信できるようになっている。
アクセス・ポイントとは,どのサービスのユーザーも同じチャネルで通信する。ただし,アクセス・ポイントから先はESS-IDごとにバーチャルLAN(VLAN)で回線を分け,各社のセンターにつないでいる。こうすることで,認証などはサービスごとに実施できる。