実験内容は入荷検品など三つ

 八重洲店における実験の内容
(日経RFIDテクノロジ2005年12月号p.5の図を再掲載)

 三つ目の棚卸し作業は丸紅の木村氏が、「ICタグの効果が最も出るポイント」と力説する工程である。これまで東京シャツは、バーコードを使って商品を管理してきた。バーコードを使う場合、八重洲店にある約3500点の商品の棚卸しに、4人で2時間をかけていた。のべ8時間である。これを今回の実験では、「2人で30分、つまりのべ1時間を目指している」(木村氏)という。

 木村氏によれば、「バーコードを使うためには事前準備が大変である」。まず、シャツの配置は複雑である。襟の部分が厚いため、L字型に重ねて棚に収容するのが普通である。正面から見て五つの商品があったとしても、実際には九つあるといった具合だ。

 シャツの向きが変われば、バーコードの向きもまた変わる。加えて、白地のシャツの場合は汚れ防止のためにビニール袋に収容するのが一般的であるため、ビニールが邪魔になって読み取りにくくなる。ネクタイに至っては、読み取る前の事前準備としてバーコード部分を一つずつ、見える位置に取り出しておかなければならない。これに対してICタグを利用すれば、こうした事前準備もいらなくなる。

いずれは全工程をリアルタイムに連携

 現在行っている実験は八重洲店の1店舗と限定的だが、店舗を増やすのに合わせて、縫製工場の段階でICタグを付け、縫製工程管理にも利用する予定である。裁縫工場から物流倉庫への商品の受け渡しにICタグを活用することで、入荷予定データとの照合が可能になる。「データはうそを付かない」(木村氏)ため、出荷精度が向上する。

 出荷精度が上がり業務の効率化が図られることにより、商品が物流倉庫に停滞する時間を減らすことが可能になる。アパレルは生鮮食品と同じである。一番価値が高い時期に高く売る。一方、顧客が在庫切れで他店に逃げないように、在庫数を管理する。「アパレルの最大の悩みである売れ筋というトレンドに対して、縫製工程が迅速に反応できるようにしたい」(木村氏)という(終)。