2006年1月17日は,Ben Franklin氏の生誕300年にあたる。Franklin氏による多くの発見や発明の中に,落雷から建物を守る方法の考案がある。建物の一番上にとがった棒を取り付け,そこから地面---つまり建物の外---に電気の通り道を設けることで,建物に被害を与えないようにするのだ。この方法を試したところ,うまく建物を守ることができた。こうしてFranklin氏は,電気技術者のあいだだけではなく,一般にも知られる有名人になった。

 Franklin氏は「Experiments and Observations」の1769年版に,避雷針そのものと,避雷針のもたらす安心感と実際の安全性に関する文章を書いた。「Physics Today」誌の1月号にこれが引用されている。

 「雷による被害の発生確率を計算したら,10万回の雷で死亡者数は1人(もしくは損傷を受ける建物は1軒)に満たないことと,雷の被害を避けるためにお金をかけてもほとんど価値がないことにおそらく気付くだろう。ところが,どこの国でも雷で壊れた建物は目立つので,人々の心の中には雷に対する不安が強く刻み込まれ,ちょっとした雷鳴を聞くたびに,とてもつらく感じるようになる。この技術のメリットは我々の安全を確保することだけではなく,安心させる意味があるので,この避雷針というちょっとした新知識をできるだけ広めて認知度を高めるのは正しいことだろう。避雷針が雷から命を守ってくれるなど一生に一度しかないかもしれないが,心を痛めるような不安から何回も守ってくれる。全体としては,後者は前者よりも人類の幸福に貢献してくれるだろう」

http://www.physicstoday.org/vol-59/iss-1/p42.html

Copyright (c) 2006 by Bruce Schneier.


◆オリジナル記事「Ben Franklin on the Feeling of Security」
「CRYPTO-GRAM February 15, 2006」
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◆Bruce Schneier氏は米Counterpane Internet Securityの創業者およびCTO(最高技術責任者)です。Counterpane Internet Securityはセキュリティ監視の専業ベンダーであり,国内ではインテックと提携し,監視サービス「EINS/MSS+」を提供しています。