|
必聴講座ご紹介 ビッグデータ EXPO 2012春 日本マイクロソフト ビッグデータ EXPO 2012春 NEC Cloud Days Osaka 2012 セールスフォース・ドットコム |
Googleに相次ぐ失態,「成長鈍化」発言の真意は?「一体どうしてしまったのか?」---と思わず嘆きたくなるような失態が米Googleに相次いでいる。 同社は3月2日に開催したアナリスト説明会「Annual Google Analyst Day」の後,そこで使った資料をWebで公開したが,その中に社内向けに作成された機密情報が入っていた。この資料はプレゼンテーション用のPowerPointファイルだったが,同社はすぐにそのファイルを取り下げ,機密部分を削除してPDFファイルとして再掲載した。しかし,時すでに遅し。一部のユーザーがブログなどで内容を公開した。 情報は大きく分けて2つ。1つは同社が計画していると思われる新サービスに関するもの。もう1つは同社の業績に関するもの。とりわけ業績情報は,その内容が一部投資家の期待を下回ったことから,株価下落の要因となった。
売上げ見通しを誤って記載まずは今,波紋を広げている業績情報について見てみる。PowerPointファイルはすでに削除されているが,Googleが7日に米証券取引委員会(SEC)に提出した書類の中で,同社の弁明とともにオリジナルの記述部分が記載されている(SECに提出した8-Kレポート)。 その内容は,「来年における広告事業収入は今年の60億ドルから95億ドルになる」「AdSenseの利益率は2006年以降縮小していく」というもの。 Googleの説明によれば,「これら情報は今回のアナリスト説明会向けに作成されたものではなく,2005年第4四半期に社内で行った製品戦略会議向けに作成されたもの。その記述が誤って今回の資料に入ってしまった」(同社)という。 したがって「(これは)業績計画でもなければ,ガイダンスとして扱われるべきものでもない」としている。確かにこれは一理ある。同社は投資家向けガイダンスを一切発表しない企業だからだ。また広告配信サービスであるAdSenseに関しては,「当社の現在の予想を反映したものではない」(同社)と説明した。 つまりこの記述「来年における広告事業収入は今年の60億ドルから95億ドルになる」は,その時期が誤りだったというわけである。この「来年」とは2007年のことではなく「2006年」のこと。また「今年」は2006年ではなく「2005年」を指すことになる。これは大変な違いだ。これまで高い成長率を維持してきた同社が,今年は横這い止まりと受け取られてしまう記述になっていた,からだ。 とは言ってもこの「今年」「来年」を修正したにしても,Googleが2006年の売上げを95億ドル程度と見ていることが明らかになり,そのインパクトはやはり大きいとする意見もある。Google社の2005年の売上高は,61億3900万ドルで前年の31億8900万ドルからほぼ2倍となった。さらにその前年は14億6600万だった(関連記事)。毎年売上高を2倍に伸ばしてきた同社の成長が今年は鈍化するとことを意味するからだ。こうしたことを嫌気してか,7日の同社株は一時前日から7.30ドル安の357.15ドルにまで落ち込んだ。現時点(8日の終値)ではさらに低くい353.88ドルとなっている。
CFOの「成長鈍化」発言,市場は敏感に反応実は,このGoogleの「成長鈍化騒動」は,その数日前に開かれたMerrill Lynch主催の説明会に端を発す。同社CFO(最高財務責任者)George Reyes氏が会場で次のような発言をし,物議をかもしたのだ。 「明らかに我々の成長率は鈍化しつつある。我々は新たな収入源を見つける必要がある」(Reyes氏/internetnews.comの記事/CNET News.comの記事) 大きな動揺を招いた。これまで驚異的な成長を続けてきたGoogleに陰りが見え始めたとの懸念が広がったのだ。Googleは同日,Reyes CFOの発言をより明確に説明するとして,公式声明を発表。「収益増加は今後も続く」としながらも,「当社の成長率は緩やかに減少している。今後もこの傾向は続くだろう。売上高が今後増え続けるにつれ,これまでのような(高い)成長率を維持していくのは難しくなる」と,より詳細な説明を行った(発表資料)しかしこれにも市場は敏感に反応。株価は一時前日比7%安の338.51ドルにまで下がった。 3月2日のアナリスト説明会は,こうした投資家の動揺を沈静化させる狙いがあったと思われるが,それに使った資料に誤記があり,さらに動揺を広げてしまった。お粗末な結果となってしまったというわけだ。
「成長要因はある」とCEOが投資家に説明ただしこの日,同社CEO Eric Schmidt氏が壇上に立って投資家に説明した内容と,同じくPowerPointファイル内にあったもう1つの内部情報は,同社の今後の成長維持の材料になるかもしれないと見る向きもある。 Schmidt CEOは投資家に対し,「(需要に支えられ)すべては全速力で動いている。我々が定義するGoogleのマーケットとは,世界中のすべてだ」と強気な発言を行った。広告分野では,中規模の顧客から大規模の顧客へと拡張していく。さらに,紙媒体/ラジオ/モバイル/ダイレクト・メール分野と,ネット以外の分野へ力を入れていくことを強調。同社に成長要因があることを訴えた。 また,同氏は,AOLへの出資が2005年におけるGoogleのハイライトだったと説明(関連記事)。2006年の注力点として,検索インデックスやパーソナル化の拡大を挙げた(Googleの投資家向けサイトで3月2日の説明会の映像を見ることが出来る/internetnews.comに掲載の関連記事)。 この「検索インデックスの拡大」と「パーソナル化の強化」計画について,それを裏付けるのが前述のPowerPointファイルにあった内部情報である。このファイルはもはや手に入らないが,その内容をネットで閲覧した人が何人かおり,内容をブログに書いた。そうした情報から,Googleが,ユーザーのパソコンのハードディスク装置(HDD)内にあるすべてのデータを保存するサービスを考えていることが分かってきた。
ユーザーのデータをすべて吸い上げる?それはPowerPoint資料にあった「Store 100%」と題する計画の記述部分で明らかになったという。具体的には,この計画は3つの要素(サービス)で構成されるという。(1)「GDS」(2)「Lighthouse」(3)「Gdrive」だ。米メディアが報じるところによると,(1)のGDSは「Google Desktop Search」を意味する。これはGoogleが最近始めたサービスのひとつの機能で,ユーザーのHDDのデータを一時的にGoogleのサーバーに保存し,どのコンピュータからでも情報検索できるようにするというもの。 そして(2)のLighthouse(灯台)については,その名称やファイルに「access list」という説明が付いていたことから,おそらく「アクセス権限」の機能を提供するものと米メディアは推測している(掲載記事)。(1)のサービスについてはプライバシ保護団体から非難されるなど物議をかもしており(関連記事),そうした懸念に対処するものと思われる。 そして3つ目の「Gdrive」。同記事によれば,これがユーザーのデータをすべてGoogleのサーバーに保存するサービスとなる。PowerPoint資料の記述内容からそう考えられるのだという。そして,このサービスの場合,ユーザー・データの常駐場所はGoogleのサーバーで,ユーザーのHDDはデータの仮置き場となる。ユーザーのHDDはパソコンをスムーズに動作させるために使うという。つまりデータの所属ということについては,現行のGoogle Desktop Searchとは主客転倒の形になる。またこのサービスを説明する次のような文章も資料の中にあったと記事では述べている。 「無限大のストレージを提供することで,我々は,電子メール/Web閲覧履歴/写真/ブックマークといったユーザーのすべてのファイルを格納できる。そしてどこからでもアクセスできるようにする(どの機器/どのプラットフォームetc.からでも)」(掲載記事)
Googleが直面している最大の問題この計画については今のところこれくらいのことしか分からない。また信憑性のほども定かでない。同社が描いている構想であることは間違いなさそうだが,これをどのように実現するか,筆者には皆目見当も付かないといったところだ。 今や100Gバイト近くあるパソコンHDDのデータを日々行き来させるのは現実的に無理な話。Googleは,データの差分や,インデックスのみ,または特定のフォルダ/ファイルのみといったことを考えているのかもしれない。あるいはPtoPでデータを分散して扱うということも考えられるが,やはり推測の域を出ない。またGoogleはこのサービスでどのような広告モデルを構築できるのか。そんなことにも疑問が残る。 これまで驚異的な成長を続けてきたGoogleには,今後も同様の期待が寄せられている。1月31日に発表した2005年第4四半期/通期の業績(関連記事)は決して悪い内容ではなかったが,成長期待が大きく膨らみすぎたことへの反動か,業績発表直後に株価は急落した。 売上高の約97〜98%を広告収入が占めていることへの懸念が広がっているのも事実。同社は次々に新サービスを投入し,新たな収入基盤を模索しているかのようにも思えるが,それをどう実現していくのかまだ明確な答えは見えていない。常に飛躍的な成長が求められるGoogle。同社が今直面している最大の問題。それは巨大になった自身の姿なのかもしれない。
■著者紹介:小久保 重信(こくぼ しげのぶ)
◎関連記事 連載新着記事一覧へ >>
|