はじめに

三井 英樹@日刊デジタルクリエイターズ

 この数年間で,(インターネットの総称としての)Webは私たちの生活に深く関係する身近なツールになりました。様々な情報を,この環境の上で閲覧や操作できることは,特別なものから,徐々に当たり前で,なくてはならないモノに変わろうとしていると言えるでしょう。

 特別なものから日常のものへとシフトしていく中で,Web自体も大きく変わるべきところが見えてきています。様々なことが挙げられますが,利用者という立場からすれば,やはり「ユーザー・インタフェース(UI)」が一番の関心事です。

 特定のITリテラシの高い人たちだけが使うものではない世界に突入する以上,作り手の側の意識も変化しなければ,ニーズに対応できません。そして,こうしたWebアプリケーションの大量生産の時代にも入っています。今あるWebアプリケーションは,私たちの生活を便利にしてくれていますが,これで十分ではないのです。もっと多くの分野で,もっと便利な状況が望まれ続けていくでしょう。

 そうなると,作り手の開発体制自体にも変化が及びます。テクノロジー中心で推進しても使ってもらえなければ意味がありません。見栄え等のグラフィック・デザインだけで奇抜さを狙っても,それほど多くの人がついて来てくれるわけでもないでしょう。

 今まで交流が深いとはいえなかった,エンジニアとデザイナが協力して,エンドユーザーの満足を勝ち取る時代がすぐそこまでやって来ているのです。

 デザインとエンジニアリングが融合した世界。それがこれからの私たちの生活の中にもっと広がり定着して行くことを祈りつつ,この連載を書き続けて行きたいと思います。

目次

・第1回 Rich Internet Application(RIA)の時代

・第2回 システムという概念の変遷

・第3回 Rich Internet Application(RIA)の特徴

・第4回 Rich Internet Application(RIA)とは

・第5回 エンドユーザー・リソースという考え方

・第6回 RIAを学習するためのヒント

・第7回 Web構築に必要とされるものとは?

・第8回 求められる組織の力

・第9回 レイアウトという付加価値

・第10回 ユーザー・インタフェース(UI)に経済効果はないのか

・第11回 「おーい」で反応できるアプリケーション

・第12回 人にやさしい業務アプリを実現する方法

・第13回 ユーザーが理解しやすい「表」をどうデザインするか

・第14回 “読まれない”注意事項を読ませる方法

・第15回 ユーザーの“慣れや知識”に応じてUIを変える方法

・第16回 ボタンを押させるテクニック

・第17回 画面の切り替えを快適にする“演出”

・第18回 ユーザー・インタフェース作りに必要なマーケティング感覚

・第19回 リッチなUIにおけるアクセシビリティ

・第20回 お姉さんが教えてくれるユーザー・インタフェース

・第21回 開発する側の都合で画面を設計していないか

・第22回 適切な「色」の選び方

・第23回 「色」が持っている三つのチカラ

・第24回 色コンプレックスを克服する方法

・第25回 画面のレイアウトほど,緻密な戦略が必要なものはない

・第26回 どこにメニューをおくべきか,どこが画面の一等地か

・第27回 Webデザインには「答え」がない?

・第28回 Webデザインをマーケティングに役立てるヒント

・第29回 ユーザーをWebサイトへ誘導する今どきの方法

第30回 良いサイトは,サイトの「利用」され方を知っている 

第31回 Webデザインをテストする方法 

第32回 フリーのツールでWebデザインをテストする 

第33回 Webサイトのテストを,上手にマネジメントするには 

第34回 Webサイト上の問題をどのように解決すべきか 

第35回 画面設計書はどう作られるべきか 

第36回 画面設計書を書くための手法とツール 

第37回 ドキュメント作りを活性化させる方法 

第38回 コミュニケーション・コストをいかに軽減するか 

第39回 Web開発者との付き合い方 ~Web屋の一分(いちぶん) 

第40回 Web開発者が持つべき視点 

第41回 ユーザビリティの投資対効果考 

第42回 押して頂く「ボタン」への工夫と愛情 

第43回 入力してもらえるお客様入力フォーム 

第44回 入力してもらえるお客様入力フォーム【後編】 

第45回 サイトマップの代表的な三つの型とそのバリエーション 

第46回 Webサイトの変遷とそれを支えるモノ 

第47回 コミュニケーションを阻む10の壁 

第48回 動きを仕様書に記す難しさ 

第49回 RIA化するWeb ~「戦略」を必要とするWeb~ 

第50回 デザインとは「問題解決」 

第51回 Web時代の知識習得方法とセミナー参加 

第52回 Web制作会社が企業コンサルテーションに関わる理由 

第53回 交渉力/ファシリテーション

第54回 3K問題/変わらなきゃ,変えなくちゃ

第55回 じゃあ,とりあえずデザイン,2~3本

第56回 デザインの対費用効果[ROI]

第57回 Web屋の喜び

第58回 アワード受賞サイトから学ぶ:アックゼロヨン・アワード2007

第59回 RIAと検索:情報検索からアプリ検索へ

第60回 「CMS」は魔法のツールではない,達成目的を明確にせよ

第61回 IT投資削減時代にITですべきこと

第62回 持続可能なWebサイト開発を支える12の要素

第63回 サイトを嫌わせる五つの要素:あいうえお

第64回 サイトを見つめる5人の視点:ABCDE

第65回 [図解]Webサイト構築プロジェクト・ワークフロー

第66回(最終回) 課題は「SET」で解決しよう!



三井 英樹(みつい ひでき)
1963年大阪生まれ。日本DEC,日本総合研究所,野村総合研究所,などを経て,現在ビジネス・アーキテクツ所属。Webサイト構築の現場に必要な技術的人的問題点の解決と,エンジニアとデザイナの共存補完関係がテーマ。開発者の品格がサイトに現れると信じ精進中。WebサイトをXMLで視覚化する「Ridual」や,RIAコンソーシアム日刊デジタルクリエイターズ等で活動中。Webサイトとして,深く大きくかかわったのは、Visaモール(Phase1)とJAL(Flash版:簡単窓口モード/クイックモード)など。