情報システムの構築・運用を考える中堅・中小企業の経営者や現場のIT担当者にとって,本当に必要な情報とはいったい何だろうか?

 2006年1月に「ITpro SMB」を担当することが決まった時,まず考えたのはそのことでした。ひとくちに中堅・中小企業といっても様々な業種・業態があります。果たして共通項でくくれるような情報ニーズが存在するのだろうか?あるいは,共通項でくくることに,どの程度の意味があるのだろうか?

 ITpro SMBとは,中堅・中小企業のIT化支援に役立つ情報を提供する,ITproのテーマサイトです。現状では,中堅・中小企業でのIT化の実例を紹介するケーススタディ,システム構築・運用に関連した法律やセキュリティの話題,各種の市場調査や分析,それにGoogle活用術など業務に役立つノウハウ情報を掲載しています。

 中堅・中小企業にどんな情報を提供していくべきかについて,筆者なりの仮説はいくつかあります。

 例えば,よく言われる中堅・中小企業の悩みには次のようなものがあります。社内で優秀なIT専任担当者を確保するのが難しい,かといって外部の専門家に依頼するのは料金の根拠がよく分からないので不安,大企業に比べて資金的な余裕が乏しいためにIT関連の投資はどうしても後回しになってしまう,などです。

 これらを一気に解決するような「銀の銃弾」は,少なくとも現状では存在しません。ただし,中長期的に見ればITコーディネータ制度や安価なASP(Application Service Provider)サービスがこれらの悩みを解決,あるいは軽減していく可能性があります。そうした話題は,ITpro SMBで積極的に取り上げていきたいと考えています。

 もう1つの仮説は,経営トップの意思決定に役立つ情報を重点的に提供すべき,というものです。専任のIT要員を抱えているケースがごく少ない中堅・中小企業のIT化では,特に経営トップのリーダーシップが不可欠だからです。社外の専門家を確保するにしても,最終的には経営トップのリーダーシップがIT化の成否を大きく左右します。

 経営者にとってITは道具であり,最終的な目標は優れた製品・サービスを提供する,あるいは経営の羅針盤となる正確な“数字”を得ることにあります。だとすれば,純然たるIT技術者向けとは異なる観点で,システムの話題を取り上げることはできるはずです。

 漠然とした言い方になって申し訳ありませんが,例えば,限られたIT投資で,経理担当者が横領・着服できないような内部統制の仕組みをどのように構築していくか,あるいは現場の負担を増やさずに,(どんぶり勘定の)原価計算をより正確なものに改めるにはどうすればいいのか?そうした目標の実現手段という観点から,ITを取り上げていこうと考えています(連載記事について現在,準備を進めているところです)。

 ITpro SMBでは今後,質・量の両面でさらなる内容の拡充を予定しています。実を言うと,筆者が1月にITpro SMBの担当を前任者から引き継いだ時点で,内容を拡充していくという方針は固まっていましたので,これから改めて中堅・中小企業における経営者やIT担当者の真の情報ニーズを探っていきたいと思います。

 とにかく,いろいろ考えてはいますが,まだまだ試行錯誤の最中にあります。ご意見があれば,ぜひお送り下さい。今後の参考にさせていただきます。