転居や就職など新生活を始める人が多いこの時期。身の回りのグッズを買いそろえるのに意外と便利なのが100円ショップだ。台所用品や文房具などあらゆるものが100円で売っているので長い時間うろうろしても飽きない。こんな100円ショップを業務改善に役立てている方に出会った。日経情報ストラテジーでは、5月号(3月24日発売)で現場改善をテーマにした特集を予定している。取材を進めるなかで、業務改善に取り組む際にまず向かうのが100円ショップだというがいたのだ。日野自動車で販売会社の業務改善を支援する部門の方である。全国の販売会社に行脚を続ける担当者が、現場に赴いてまず行くところが100円ショップなのだという。

 100円ショップを活用する理由には、商品の豊富さと安さにある。改善に取り組む際には、進ちょくボードなど見える化を推進するための道具がいくつかある。これらには、マグネットやクリアファイルなどが大量に必要となる。文房具店で必要な道具をそろえるだけで、結構な金額になってしまう。100円ショップであれば、同じ金額でも量が多かったりするので重宝するのだという。業務改善の最終目的は利益を向上させること。改善にお金をかけて道具を作っていたのでは元も子もない。改善で使う道具には、廃材を活用して自作するなどコストをかけないで作る各社なりの工夫がなされている。

 農耕機を製造するクボタの改善活動も、節約の精神がみなぎっている。同社には、「5ゲン道場」とよぶ業務改善のノウハウを学ぶための施設がある。5ゲン道場では、座学での改善のやり方のほかに、生産性を向上させるための道具の作り方を教えている。道場内には、入門した門下生が道具を作るためのヒントがたくさん展示してある。空気を送り出すことでゴムといった小さな部品を正確に1つずつ取り出せる機械や、手を動かさずにネジが1つずつ滑り落ちてくるように工夫した自作の治具などがその一例である。これらの展示物には、材料費に加えて電気代などのランニングコストも紹介されている。門下生は持ち場の課題を解決するために費用対効果を考えながら、生産性を向上させるための道具を考えていく。

 業務改善に取り組む場合、新たに情報システムを導入して業務プロセスを大きく変えて効果を出すやり方もあるだろう。だが、それには投資額を上回る効果が出るまでに相当の時間がかかる。少ない投資であれば、すぐにでも実行できるし方向転換もすぐにできる。こうした小さな積み重ねこそが現場改善力なのではないかと感じた。