■Windows Server 2003 R2の特徴は,Windows Server 2003と高い互換性を持つことだ。R2の追加機能はOSとは別のCD-ROMで提供され,ユーザーにとって必要ない機能が勝手にインストールされることはない。ただし,サポート期間もWindows Server 2003と同じなので,やや注意が必要である。

(日経Windowsプロ2005年12月号「期待の即戦力 Windows Server 2003R2の全貌」より)

(坂口 裕一)


R2のサポート期間に注意

 R2は,新機能を搭載した新製品として出荷されるが,サポート期間,アップグレード版の提供において,特殊な形態をとることに注意したい。通常,新製品として出荷されるメジャー・リリースでは,新しいサポート期間が設定される。Windows Server 2003の場合,出荷から5年間または次期OSが出荷されてから2年間のうち長い方の期間において,有償/無償のすべてのサポートが提供される。この期間は,メインストリーム・サポート・フェーズと呼ばれる。

 これに対してR2では,サポート期間はWindows Server 2003の発売日である2003年6月から数えたものとなり,延長はされない。このためR2のメインストリーム・サポート・フェーズが終わるのは,次期OSのLonghorn Serverが2007年に出荷されてから2年後の2009年までである。

 さらに,Windows Server 2003からR2へのアップグレード版は提供されない。これは,SAまたはEAでサーバーOSを購入したユーザーに対して,パッケージでサーバーOSを購入したユーザーと差を付けるためである。R2は,SAまたはEAのユーザーには無償で提供されるが,その他のユーザーがR2を利用する場合は,新規に購入しなければならない。R2が出荷された後は,マイクロソフトが販売するサーバーOSはすべて,R2となりWindows Server 2003は併売されない。ただしR2を購入して,Windows Server 2003へダウングレードすることは可能になっている。

2枚組のCD-ROMで提供

表2●Windows Server 2003 R2が提供されるエディションと含まれる機能
クロスファイルRDC(Remote Differential Compression)とは,ファイルを複数カ所に同期できる機能のこと。データは差分だけを圧縮して転送している。
  搭載される主な機能   出荷予定時期
    Active Directoryフェデレーション・サービス 分散ファイル・システムのクロスファイルRDC  
Windows Server 2003 R2,
同Storage Server R2 Standard Edition
◎クォータ管理
◎分散ファイル・システム(DFS)レプリケーション
◎印刷管理コンソール
◎Active Directory Application Mode
◎.NET Framework 2.0
◎MMC 3.0
◎Windows SharePoint Services SP2 など
2006年
2月
Windows Server 2003 R2,
同Storage Server R2 Enterprise Edition
○*
Windows Server 2003 R2 Datacenter Edition ○*
Windows Server 2003 R2 Standard x64 Edition
Windows Server 2003 R2 Enterprise x64 Edition ○*
Windows Server 2003 R2 Datacenter x64 Edition ○*
Windows Small Business Server 2003 R2 未定 未定 未定 未定
*コピーするサーバーのどちらか一方が, Enterprise EditionまたはDatacenter Editionでなければならない。

 新機能を満載したR2は,2枚組のCD-ROMで提供される。1枚目は,Service Pack 1を適用済みのWindows Server 2003,2枚目がR2で提供される新機能を収めたものである(図1)。

 R2の出荷後は,Windows Server 2003は販売されなくなるが,1枚目だけをインストールすれば,Service Pack 1適用済みのWindows Server 2003と同じものとして利用できる。R2の新機能は,2枚目のCD-ROMに収められている。

 R2は,Windows Server 2003の各エディションで,32ビット版と64ビット版が提供される(表2)。さらに,Windows Storage Server 2003とWindows Small Business Server 2003でもR2が提供される予定である。搭載される機能は,ほとんど同じだが,Active Directoryフェデレーション・サービスと分散ファイル・システムの差分コピー機能だけが,エディションによって異なる。

必要な機能があれば即座にR2へ

 様々な魅力を秘めたR2だが,必要と思われる機能があれば,即座に移行を検討すべきだ。特に,SAまたはEAのユーザーは追加コストが不要であるため,迷うことはない。R2は,Windows NT Server 4.0からの移行など,様々な移行手順が用意されている(図4)。

図4●Windows Server 2003 R2のインストール手順
Service Pack 1の適用後に,2枚目のCD-ROMでR2のコンポーネントをインストールする。

 移行時に注意しなければならないのは,R2を導入する前提となるWindows Server 2003 SP1の適用である。SP1が公開された当初は,SP1の適用によってターミナル・サーバーへ接続できなくなる,ファイル共有ができなくなる,Exchangeサーバーからドメイン・コントローラに接続できなくなる,といったトラブルがあった(該当サイト)。また,アプリケーションの動作に問題が発生することも報告されている(該当サイト)。

 だが公開から7カ月が経過し,こうした問題も徐々に解決されてきた。大塚商会テクニカルソリューションセンターMSソリューショングループの林 達也スペシャリストは,「SP1の公開当初は顧客に導入を勧めなかったが,問題の解決が進んでおり,R2が登場するころにはSP1の適用が問題になることはないだろう」と予測する。

最小限の機能だけをオンにする

 R2で1枚目のCD-ROMをインストールし終えると,2枚目のCD-ROMを要求される(図4)。ここで[キャンセル]ボタンを押せば,2枚目をインストールしないで終える。一方,2枚目のCD-ROMをインストールすると,再起動後にWindows Server 2003 R2のロゴが現れる。

 2枚のCD-ROMをインストールし終えても,デスクトップの見た目は従来のWindows Server 2003となんら変わりはない。異なるのは,標準で.NET Framework 2.0がインストールされている点とMMC(マイクロソフト管理コンソール)の新版であるMMC 3.0がインストールされる点である。R2で追加された機能は,ほとんど利用できない状態になっており,トラブルの発生を回避する配慮がなされている。R2の新機能を追加するには,[コントロールパネル]-[プログラムの追加と削除]-[Windowsコンポーネントの追加と削除]で,必要な機能だけを選択して,インストールする(図5)。

図5●Windows Server 2003 R2の新機能は[プログラムの追加と削除]画面の [Windowsコンポーネントの追加と削除]で追加する

 R2で搭載されたMMC 3.0は,強化された様々な管理機能を使いこなす手助けをしている(図6)。MMC 3.0では,画面の右側に「操作ウインドウ」が新たに加わった。ここでは,現在利用可能な操作が一覧表示されており,ワン・クリックで次の操作を実行できる。操作ウインドウはデフォルトでは表示されないが,[表示]-[カスタマイズ]で開いた画面で[操作ウィンドウ]にクリックしてチェックを入れると表示されるようになる。

図6●Windows Server 2003 R2に実装されているMMC(マイクロソフト管理コンソール) 3.0
[表示]-[カスタマイズ]で設定すると,画面右側に[操作ウィンドウ]が表示される。 [操作ウィンドウ]では,ワン・クリックで次の操作を実行できるようになった。なお,R2の多くの機能はデフォルトではインストールされない。