今回は、前回取り上げたCMS「NOREN」の導入事例から、中部国際空港のWebサイトを紹介します。「セントレア」の愛称で知られる中部国際空港は、2005年の2月17日に開港したばかりの新しい空港です。開港に合わせてオープンしたWebサイトは、月に50~60件ほどの更新を行いながら、開港期は約50万ページビュー、現在でも平均して月間12~15万ページビューという多くのアクセスに応えています。このサイトで、なぜNORENが採用されたのか、またNORENで実際にどのようにコンテンツ管理とサイト運用を行っているのかを見ていきましょう。

“空港サイト”に課せられたミッション

 セントレアは、空港という高い信頼性が要求される公共施設であることに加えて、2005年9月まで愛知で開催された「愛・地球博」への主要アクセスポイントとして想定されていました。このため、Webサイトにもオープン以来、一貫してスピーディで“間違いのない”コンテンツの運用管理が求められてきました。

 セントレアのWebサイトは、業者の入札からオープンまで、およそ1年弱かけて準備が進められました。この当初からの最大のテーマは、「日常の更新と承認プロセスをいかに確実にこなしていくか」ということでした。

 初めから、情報の種類が多岐に渡り、量が多い、つまり関わる部署やスタッフが多いことが想定されており、かつ掲載情報には正確さが要求されていたわけです。この条件をクリアするために、日々の運用管理を支援するCMSが必要である、と判断したのは当然の流れと言えるでしょう。

 さまざまなCMSがある中で最終的にNORENが選ばれたのは、「多種多様な要求を満たすために必要な機能がすべて用意されていて、カスタマイズが全く不要だったから」と、富士通とともにセントレアWebサイトの入札にNORENを提案し、現在もサイト運用の各種業務を担当しているメイテツコムの新保尚二氏(事業統括本部第3システム事業部シニアマネージャー)は言います。

 前回紹介した通り、NORENの最大の特長は、非常に多くの機能を初めからパッケージ化して提供していることです。これにより、カスタマイズに付随する開発や、さらにそれに伴って発生するサポートに関するコストを軽減できたわけです。

幅広いユーザー層に対応するサイト構成

 セントレアWebサイトのコンテンツは、大きく分けて2種類で構成されています。1つは、フライト情報、施設やサービスの案内など、空港そのものの機能に関わる情報です。もう1つは、セントレアの特徴的なコンセプトでもある、アミューズメント要素を持つ商業施設として空港を楽しむための、ショッピングや飲食などに関する各種の情報です。レストランやカフェを始めとする、ターミナルビル施設内の約100軒の店舗情報を軸に、各種イベントの案内などが掲載されています。

 さらにこれらのコンテンツは、外国人向けに、日本語に加えて、英語、韓国語、中国語(簡体、繁体の2種類)の計5言語での閲覧に対応しています。また、主要キャリアの携帯電話に対応したサイトのほか、高齢者や体の不自由なユーザーに対するアクセシビリティーへの配慮として、音声読み上げ対応サイト(上記5言語に対応)も同時に提供しています。

 これらを合計して、およそ3,000ページものコンテンツが運用管理されています。ここでは、まさにCMS、とりわけNORENの力が活かされています。

 まず、他言語サイトや音声読み上げ対応、携帯電話対応といった“コンテンツのバリエーション”は、すべてNORENのテンプレート機能により実現しています。いったん元の情報を作成すれば、異なるテンプレートを当てはめるだけで、音声読み上げ対応サイトや携帯電話向けサイトが同時に生成できます。反対に、同じテンプレートに異なる言語の原稿を入れれば、多言語対応が可能なわけです。

 また、前回紹介した通り、NORENはスタティック型のCMSですが、高度な自動更新機能を備えており、属性やスケジュールの設定次第で、ダイナミック型のように運用することも可能です。セントレアWebサイトでは、ブレッドクラムなどのナビゲーションのほか、上述の音声読み上げ対応サイトと携帯電話向けサイトが、通常の更新作業に応じて自動的に生成されています。


星野 純 (ほしの じゅん) ■ 主にデザインやトレンドに関する市場調査などを行う日本カラーデザイン研究所で、ソフトウェア開発や企業向け情報資料の編集に従事。ちょうどそのころ、一般に開放されたばかりのインターネットと出会い、衝撃を受ける。「今この『デジタル革命』に立ち会わないでどうする!」と思い立ち、日経BP社で記者としてインターネットとデジタルパブリッシングを追いかける生活に転身。その後、Webプロダクション「WebBakers(ウェブベイカーズ)」を設立してWeb制作の現場に。以来、「CMSを使って、最小限のリソースで最大限のパフォーマンスを」を標榜しつつ活動中。