“動的のように”使えるスタティック型

 NORENは、第2回で説明したCMSのタイプ分類で見ると、最終的な公開の際に、管理しているコンテンツの構成要素(パーツ)を組み合わせ、静的なHTMLファイルとして書き出し、配信サーバに渡すスタティック型CMSです。

 スタティック型CMSはスケーラビリティに優れ、導入する環境に合わせて、さまざまなタイプの配信システムと柔軟に組み合わせることが可能です。ダイナミック型CMSのように、閲覧者のアクセスに応じて動的な内容を配信することができない点が短所と言えますが、NORENは、この弱点を高度なHTML自動生成機能によりカバーしています。

 Web制作/運用において、動的な挙動が望まれる基本的なニーズとしては、コンテンツの更新/削除時に同時にアップデートされなければならないものがあるケースが挙げられます。例えば他のコンテンツの内容を反映したナビゲーションや、カテゴリーに応じて記事のタイトルをリストアップしたページなどです。

 ある程度コンテンツ量のあるサイトで、こうした要素を手作業で更新するのは、その負担とミスの発生などのリスクから考えて現実的ではありません。

 これをスタティック型CMSでこなすには、書き出すページの種類と頻度を増やす必要がありますが、NORENでは、あらかじめ設定しておけば、あるコンテンツを更新した際、それに関連したページや関連個所のリンクなどを自動的にアップデートして同時に公開することができます。

 加えてNORENは、コンテンツの公開スケジュールや掲載期間を、分単位できめ細かく管理できます。コンテンツ更新と自動生成機能を組み合わせてスケジューリングすることで、複雑な動的処理が必要でなければ、NORENの自動処理で対応できるケースは多いでしょう。

敷居を低くして幅広い運用形態を可能に

 NORENのもう1つ大きな特徴は、多機能でありながら、運用が極力簡単にできるよう配慮されている点です。

 アシストによれば、これまでの導入実績の中には「システム専任担当のようなスタッフではなく、広報担当者のように企業内でWebを管轄するセクションのスタッフが自分で運用しているケースも多々ある」そうです。

 また、NORENを活用するためのテンプレートやコンポーネント作成も、「ユーザ向けに提供しているテンプレートキットや、2日程度の講習により、HTMLを理解している程度のスキルでマスターできる」(アシスト)仕様になっています。

 一方、大抵のWeb制作/運用現場で必要とされる機能はあらかじめ用意されているため、よほど高度なカスタマイズが必要なサイトでない限り、基本的な設定次第でさまざまな性格のサイトに適応できます。実際、導入事例には、規模の大小やサイトの性格など、さまざまなバリエーションがあります。

 こうした使いやすさと汎用性は、パッケージ製品ならではでしょう。ワープロソフトの購入のようにはいきませんが、コスト面が折り合えば、導入しやすい製品と言えるでしょう。

 次回は、NORENの実際の導入事例を紹介します。


星野 純 (ほしの じゅん) ■ 主にデザインやトレンドに関する市場調査などを行う日本カラーデザイン研究所で、ソフトウェア開発や企業向け情報資料の編集に従事。ちょうどそのころ、一般に開放されたばかりのインターネットと出会い、衝撃を受ける。「今この『デジタル革命』に立ち会わないでどうする!」と思い立ち、日経BP社で記者としてインターネットとデジタルパブリッシングを追いかける生活に転身。その後、Webプロダクション「WebBakers(ウェブベイカーズ)」を設立してWeb制作の現場に。以来、「CMSを使って、最小限のリソースで最大限のパフォーマンスを」を標榜しつつ活動中。