図:NORENによるWeb制作/運用環境のイメージ
図:NORENによるWeb制作/運用環境のイメージ
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前回までで、CMSの基本的な仕組みやタイプについて大まかに理解していただけたことと思います。今回からは、具体的な製品とその活用事例を紹介していきます。最初に取り上げるのは、パッケージ製品として多くの導入実績を持つ韓国製のCMS「NOREN」です。パッケージ製品らしく非常に多機能で、さまざまなタイプのサイトに柔軟に対応できる上、サーバ構築などについての専門知識を持たない現場のデザイナーや制作者などのスタッフが直接運用できるほど、分かりやすく作られています。まさに、本連載で述べてきたCMSのメリットが分かりやすい形で汎用化されている製品と言えるでしょう。

インターネット先進国生まれのCMS

 NORENは、インターネット/ブロードバンドの利用率が極めて高い韓国で誕生しました。NORENの名は、日本国内でこの製品を取り扱うアシストにより、日本の“のれん”にちなんで付けられたもので、オリジナルは、韓国I-ON Communications社が開発した「I-ON Content Server」という製品です。

 I-ON Content Serverは、韓国内の企業から官公庁まで、非常に高いシェアを持っています。日本国内でも、アシストがNORENとして取り扱いを始めて3年が経過していますが、現在、大規模グループ企業を含めて40社ほどまで導入実績を増やしつつあります。

 CMSという言葉は、企業向けに販売される製品として広義に使われる場合、企業内のさまざまな業務にまつわるドキュメント管理までを含む、非常に高い導入コストが必要なエンタープライズ用途の管理システムを指すこともあります。しかしNORENは、あくまで本連載でこれまで述べてきたような、Web制作/運用を効率化するためのCMSを追求したパッケージ製品です。

 NORENの開発コンセプトは、Web制作/運用ワークフローの問題をいかに解決するか、ということから出発しています。この意味では、まさに本連載の第1回で挙げた「“当たり前”を実現するための課題」の解決策としてのCMSの、分かりやすい具体例の1つと言えます。

サイトの構成要素を分解して管理

 NORENの基本的な考え方は、まずWebコンテンツの構成要素を

 (A)コンテンツの中身

 (B)デザイン

 (C)プログラム

という要素で分離し、また同時にワークフローを、

 (a)コンテンツ作成者

 (b)デザイナー

 (c)プログラマー

 (d)Webサイト管理者

 (e)承認者

といった関係者(あるいは部署などのグループ)の役割による作業範囲で分離するというものです。この2種類の分離を徹底し、NOREN上でまとめて管理することで、各々の作業を独立、並行して進めることが可能となります。

 コンテンツは、テキストや画像といった中身と、デザインを定義したテンプレート、挙動(プログラム)を定義したコンポーネントといったパーツとして扱われます。これらに、任意に設定できるさまざまな属性(どのカテゴリーのページに使われるのかなどを表すメタ情報)を与え、Webブラウザー上のGUI経由で制作作業や管理を行います。

 このため、例えば原稿を執筆するコンテンツ作成者であれば、自分の作業範囲である原稿執筆にのみ専念し、承認者であれば最終的な形のページをプレビューして公開の可否の判断に専念すればよいわけです。また、最終的な形(デザインと挙動)を、PCでの閲覧を前提にしたHTMLにしたり、携帯電話向けコンテンツにしたりと、柔軟に対応することが可能です。


星野 純 (ほしの じゅん) ■ 主にデザインやトレンドに関する市場調査などを行う日本カラーデザイン研究所で、ソフトウェア開発や企業向け情報資料の編集に従事。ちょうどそのころ、一般に開放されたばかりのインターネットと出会い、衝撃を受ける。「今この『デジタル革命』に立ち会わないでどうする!」と思い立ち、日経BP社で記者としてインターネットとデジタルパブリッシングを追いかける生活に転身。その後、Webプロダクション「WebBakers(ウェブベイカーズ)」を設立してWeb制作の現場に。以来、「CMSを使って、最小限のリソースで最大限のパフォーマンスを」を標榜しつつ活動中。