図1:現在のWeb制作/運用に付きものの課題と、統合的なサイト管理のポイント
図1:現在のWeb制作/運用に付きものの課題と、統合的なサイト管理のポイント
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Webブラウザー登場から10年あまり。Webの日常化の半面、大規模化、複雑化などにより、制作/運用に関わる人間を悩ませる課題は増え続けています。そんな現在のWebにおけるデザイン作業とは、もはや表面的な、グラフィカルな表現だけにはとどまりません。システム設計や運用体制を含む広範な概念としての“Webサイトデザイン”を行わなければ、サイトを最終的な成功に導くことはできないのです。本連載では、その鍵となる可能性を持つCMS(Contents Management System)と実用例を軸に、Webサイトデザイン戦略のヒントを探っていきます。第1回は、現在のWeb制作/運用の課題を改めて整理します。

“ホームページ”から“Webサイト”へ

 Webというメディアは今や、企業から個人まで、さまざまな形態で利用される、ごく日常的な存在となりました。

 一方で、Webに対しての要求水準は高まり続けています。紙のパンフレットをWebページ化しただけのような古き良き時代から始まり、コンテンツの拡充期、Webサービス機能の向上期を経て、今ではWebに“当たり前のように”求められる要素は多岐に渡ります。大まかに言って、Webというもののイメージが“ホームページ”という単位から、“サイト”という単位へと変わってきているわけです。

 当たり前の話ですが、結果としてWebコンテンツを提供する側にとっては、多くの課題をこなさなければならず、制作や運用の負担は重くなっています(図1[拡大表示])。こうした条件をクリアするためには、いかに統合的に効率良くサイト運営を行うかが、肝になってきます。例えば企業サイトで、個別のページやカテゴリー毎のコンテンツを部署毎にバラバラに作るようなやり方は、今となってはあり得ないでしょう。

 現在の“Webを作る”という作業においては、ページレイアウトなどの個別のコンテンツのデザインや制作の前に、全体の構成や、制作ワークフローを含む運用方法(ルール)の設計という視点に立った、“サイトのデザインと統合管理”が欠かせないものになっているのです。

統合的なWebサイト運用の3つの課題

 統合的なWebの運用管理でポイントとなる要素は、図1のように大きく分けて3点挙げられます。まず1つ目は、コンテンツの管理、2つ目は、関わるヒューマンリソースと工程の管理、そして3つ目は効率的な共同作業をどう実現するか、です。

 コンテンツそのものの管理は、当然のことながら最も重要な要素です。ページとその内容、画像などメディアファイル、更新履歴とバージョン、さらにコンテンツの一貫性を保つためのデザインガイドラインを管理しなければなりません。

 2つ目のヒューマンリソースの管理は、昨今特に顕著になってきている課題と言えます。サイトを構成するコンテンツが多岐に渡るようになればなるほど、それに関わるスタッフも増えることになります。その中には、制作者もいれば、コンテンツの元となる情報提供者、またコンテンツをチェックする担当者もいるでしょう。こうしたさまざまなスタッフが適切にワークフローに関わることができるよう、スケジューリング可能な工程として役割を規定したルールを作らなければなりません。

 3つ目の共同作業の効率化も、関係者の数が増えている現在では、非常に重要です。実際、多くの場合は、すべてのスタッフが同じ時間に同じ場所で作業するようなことはほとんどありません。Webサイトの性格に適した円滑なコミュニケーションを実現すること、作業内容を必要なスタッフ間で適宜共有すること、は前述の2つの課題をクリアするためにも必要不可欠です。


星野 純 (ほしの じゅん) ■ 主にデザインやトレンドに関する市場調査などを行う日本カラーデザイン研究所で、ソフトウェア開発や企業向け情報資料の編集に従事。ちょうどそのころ、一般に開放されたばかりのインターネットと出会い、衝撃を受ける。「今この『デジタル革命』に立ち会わないでどうする!」と思い立ち、日経BP社で記者としてインターネットとデジタルパブリッシングを追いかける生活に転身。その後、Webプロダクション「WebBakers(ウェブベイカーズ)」を設立してWeb制作の現場に。以来、「CMSを使って、最小限のリソースで最大限のパフォーマンスを」を標榜しつつ活動中。