写真1 実験を行っている東京シャツの八重洲店

 東京シャツは現在100店舗を展開しており、年間流通点数は年々増えてきている。2004年度に120万点だった流通点数は、2005年には150万点まで増加した。2006年度には、200万点に達する見込みである。

 しかし丸紅の木村氏は、「まだ売り逃している部分がある」と、無線ICタグによる業務効率化の可能性を示唆する。「販売機会の損失を防止すれば、まだまだ流通点数は増えるはず」と期待する。

 実証実験に使う店舗は、東京シャツが抱える100店舗のうち、東京駅の地下街にある「八重洲店」(写真1)である。参加する店舗を1店舗に限ったため、国外の縫製工場は実験には関与していない。国内の物流倉庫に商品が到着した段階で、八重洲店向けの商品に限ってICタグを張り付けている。ICタグによる業務効率化のポイントは、(1)入荷時の検品処理、(2)売り上げ精算、(3)棚卸し作業──の三つである。

ICタグは使い捨てずに再利用

 八重洲店は店舗面積が約15坪と狭く店員が少ないため、新たに仕入れた商品が店舗の棚に並ぶまでに時間がかかっていた。営業時間は午前10時から午後8時。午前中の運送便で、約80枚のシャツを仕入れる。こうした新規仕入れ分の準備には午前中を費やすため、仕入れた分を顧客に売る準備が整うのは昼になる。「1人あたりの作業効率をいま以上に上げることができれば、商品をより早く顧客にリーチできるようになるはず」(木村氏)である。

 シャツに付けたICタグは、使い捨てではなく再利用(リユース)する。中心となる商品価格帯が2900~3500円と比較的安価であるのがその理由だ。「しばらくは再利用で様子を見る」(木村氏)戦術である。

 事前に分かっていたICタグの欠点は、ICタグに書き込まれた情報が目視では見えない点だ。情報を可視化するため、ICタグにラベルシール張り付けた。ICタグのサイズは1インチ×4インチとやや大きいが、ネクタイの裏に隠すことが可能なサイズに収めている(第3回は2006年3月14日付の本欄に掲載)。