図 WebDAVを使うファイル・アクセスのしくみ
図 WebDAVを使うファイル・アクセスのしくみ
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 WebDAV(web distributed authoring and versioning)とは,Webアクセスの技術をベースにした,異なるOSのマシン間でファイル・アクセスを実現するためのプロトコルである。

 Windowsパソコンで構築したネットワーク(Windowsネットワーク)では,Windowsの標準プロトコルである「SMB/CIFS」(server message block / common Internet file system)を使って,ファイル・サーバーや共有設定された他のパソコンのフォルダにあるファイルにアクセスする。つまりSMB/CIFSは,ファイル共有やプリンタ共有など,ネットワークOSの機能を実現するためのプロトコルという位置付けだ。

 それに対してWebDAVは,インターネットでWebアクセスに使われる標準プロトコル「HTTP」(hypertext transfer protocol)をベースに,ファイル・アクセスに利用できるよう拡張したプロトコルである。インターネットの標準文書(RFC)ではWebDAVを「HTTPの拡張仕様」と定義づけている。しかし,基本的なHTTPの枠組みを利用したファイル・アクセス向けの新プロトコルと考えた方がわかりやすいだろう。

 WebDAVを使ったファイル・アクセスは,Windowsのほか,Mac OS XやLinux,UNIXなどのそれぞれのプラットフォームにWebDAVに対応したクライアントやサーバーの機能を搭載して実現する。WebDAVを使えば,プラットフォームの違いを意識せずにファイル・アクセスを実現できる。Windowsでは,Internet Explorer(IE)がWebDAVのクライアント機能,IISがWebDAVのサーバー機能を備えている。

 WebDAVの具体的なしくみはこうだ(図)。WebDAVクライアントがファイル操作関数をHTTPのメッセージに変換し,WebDAVサーバーに送る。それを受け取ったWebDAVサーバーは,HTTPのメッセージを自分のプラットフォームのファイル操作関数に直し,ローカルのハードディスクにあるファイルを操作する。

 ただし,HTTPで定義されたコマンド(正確にはメソッドと呼ぶ)だけでは,ファイルを操作するための指示を伝えるには不十分。そこで,WebDAVではファイル・アクセス向けに7種類の新しいメソッドを追加した。追加されたのは,ファイルやフォルダの移動に使う「MOVE」,ファイルやフォルダのコピーに使う「COPY」,ファイルやフォルダの属性情報をサーバーから取得する「PROPFIND」,属性情報を変更する「PROPPATCH」など。ほかに,メソッドといっしょに使うメッセージ・ヘッダーにも新しいものを追加した。

 また,WebDAVはHTTPを基盤とするプロトコルなので,インターネット上でも利用できる。これは,一般的にLAN上で利用されるSMB/CIFSと異なる点だ。WebDAVは,HTTPと同じポート番号(80番)を使うので,ファイアウォールも容易に越えられるという特徴もある。

 

次のプロトコルのうち,HTTPを拡張したファイル・アクセス向けプロトコルはどれでしょうか。