佐藤建設工業は、PBXを使った電話システムに、オープンソースのIP-PBXソフト「Asterisk」を組み合わせることで電話会議機能を追加した。AsteriskをPBXから一拠点に見せることにより、拠点ほかの支店に電話をかけるのと同じ操作で、電話会議が開催できる。

写真1 中央のパソコンにLinuxをインストールしてAsteriskを稼働
写真1 中央のパソコンにLinuxをインストールしてAsteriskを稼働
 PBXを使った電話システムに、オープンソースのIP-PBXソフトを組み合わせて機能を拡張−−。機能拡張のために、IP電話システムを付加して利用するのは、ケーブルの架設工事などを得意とする佐藤建設工業である。「既存の内線システムに、Asterisk(アスタリスク)を組み合わせることで、簡単に電話会議機能を追加できた」(情報通信グループの安川 正邦氏)。

 Asteriskとは、いま注目されているオープンソースのIP-PBXソフト。Linuxなどで稼働し、PBX機能以外に電話会議や音声自動応答(IVR)、ボイス・メールなどのアプリケーションを標準装備する。同社のシステムの特徴は、このAsteriskをPBXとしてではなく、電話会議のサーバーとして使っている点である。同社はパソコンにLinuxをインストールしてAsteriskを稼働(写真1)。

 このAsteriskをVoIP(voice over IP)ゲートウエイ経由で既存のPBXと接続する。PBXからは“一拠点”に見えるように設定。ユーザーは、ほかの支店に電話する場合と同じようにダイヤルすれば、Asteriskの電話会議システムに接続できる(図1)。

図1 オープンソースのIP-PBX「Asterisk」をアプリケーション・サーバーとして活用
図1 オープンソースのIP-PBX「Asterisk」をアプリケーション・サーバーとして活用
佐藤建設工業は、AsteriskのPBX機能でなく付加機能を活用して、既存のPBXによる内線電話環境に電話会議を付加した。

AsteriskでH.323を使用

 佐藤建設工業は、2002年から全国19拠点に順次VoIPゲートウエイを設置。2004年末までに内線をIP化した。呼制御プロトコルは2002年時点で一般的だったH.323を採用。アクセス回線の変更なども含め、年間1000万円以上かかっていた通信コストを約600万円にまで下げた。

 IP化後、同社は出張者などがインターネット経由で内線通話できる仕組みも取り入れた。この際、社外から社内への接続には「NAT越え」が必要なため、H.323対応ゲートキーパーが不可欠となった。ゲートキーパーとは、電話番号とIPアドレスの対応付けなどを管理・運用する制御用サーバーである。同社は複数メーカーのH.323ゲートウエイを使っていたため、ゲートキーパーは各メーカーの仕様に対応できる製品であることが必要だった。そこで、オープンソースの「GNU Gatekeeper」を採用した。

 だが、「H.323だけでは電話用アプリケーションの次の展開が期待できない」(安川氏)うえ、現場からは電話会議を使いたいという声も挙がっていた。そこで注目したのがAsteriskだ。既にGNU Gatekeeperを使っていた同社にとって、オープンソースのAsteriskの採用にためらいはなかった。しかも、AsteriskはSIP(session initiation protocol)だけではなく、H.323にも対応。同社の電話システムとの組み合わせにも適していた。